質量の旬は冬だと知っている霧がひそかに臓を撫でても #短歌
残り香を確かめながら顔を埋め去年のわたしを抱きしめている #短歌
手続きを終えてふと見る肩のうえ 花弁ひとつがまだ在職中 #短歌
春風をまとうことなく歩いてる美人の背には無臭の正義 #短歌
うやむやのうちに溶け出す風の骨 抱けば音する記憶のように #短歌
そっといま自分を外す音がして少しむずかしい声が届いた #短歌
不審者が私でないと知る瞬間 曇天の色少し薄まる #短歌
誠意とは名を明かすことらしいけど呼ばれた声がまだ傷んでる #短歌
やさしくてほぐしてしまう声がある糸巻くように朝を撫でてく #短歌
仕事です矢面なんですと笑えば指のひらからほぐれる孤独 #短歌
煙立つ屋台の端で歯を入れる孤独の味を油が隠す #短歌
好きだったひとに課税をする午後の指の体温まだ残ってる #短歌
名前では呼べぬひとからはじまって街が少しずつ物語めく #短歌
朝焼けに走ったし擦ったし笑ってた息のかたちがひかりに混ざる #短歌
拾ったのにまた落としたよ夕暮れに手のかたちだけあたたかくなる #短歌
友でなく恋でもなくて街として配られた手のぬくもりを持つ #短歌
だいじょうぶ軽く闇落ちしてるだけカーテン越しの月が見ている #短歌
いいよいいよと言いすぎた春の風 異動願いに花びらひとつ #短歌
指先に拒絶のかたち宿りけり聞くと思うな夜のくびすじ #短歌
重いものとがったものを置かないで決まりごとには風が起こって #短歌
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