雲丹だけを残して皿に海の色 口に届かぬ記憶のなかで #短歌
見てしまうことの痛みを避けるため見ぬふりだけが支える夜よ #短歌
目を閉じてひとりになれる身近さを歯磨きだけがそっと知ってる #短歌
きみだけが他より大きく見えるのは心のなかの景色のせいだ #短歌
丸い飯ことば少なに差し出され黙って食べるふたりの時間 #短歌
時計見て泣かないでとは言えなくて秒針の音夜を削るよ #短歌
食べ終えた皿のまわりにまだ残るケーキの影をそった吸い込む #短歌
ゴミ箱の上にひとりで立ちながら食べるかすかな背徳の味 #短歌
星座とは名づけられないひとしずく裾のしみさえ宇宙のようで #短歌
隠れるよう自販機裏に立ち止まり煙のかたち星座に似たり #短歌
ああここで海がひらける道の先 目もそらさずに立ち尽くすだけ #短歌
黒くある染みとつぶれた虫ひとつ 指でこすってなにもなかった #短歌
待っていたような顔して猫がいてこのタイミング外さぬ生き物 #短歌
傘の骨 ひとつ濡れずに透けてゆく小雨の加減決められぬ神 #短歌
遠い人思い出すとき虹は立つ見せたい相手まだ名を呼べず #短歌
あれだったレゴランドだと気づくとき積み木みたいな街がほどける #短歌
おいしげる夏のしるしに立ち止まり見上げたら枝はひかりをはじく #短歌
冷えた飯ラップで包み戻す熱 母のいない日おなじ手つきで #短歌
しお味の手さきに光る油かな 泣いてもよいと袋が鳴れる #短歌
ポケットにキャンディひとつ忍ばせてきみの口まで旅をさせたる #短歌
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