本当は朱の深さを測れない主人公ほど少し痛んで #短歌
広場には空白ばかりあふれいて田舎の町をだれも知らない #短歌
眠れずに舌で確かめ痛む夜の奥から町がしずんで #短歌
澄みわたれ空の絵の具にぬれながらきたないものをわたしは拾う #短歌
醤油だけ少し遠いと気づいたらこの夜のすべて遠くににじむ #短歌
無音こそ最初の音と気づくとき頁の陸は果てなく広い #短歌
土産話ここで聞くとは思わずに午後の光が白くゆれてる #短歌
ひかりより速くは届かぬ言葉あり十年先も恋は変わらぬ #短歌
埋め立てて風も記憶もここにある 光の届かぬ部屋のまんなか #短歌
声あげるたびにずれてく世界地図 きのうの雨がまだここにある #短歌
待つはずの影はどこにもなくてただひらかれたままの文庫のにおい #短歌
隠したいものは夕陽か自分かといびつな影の譜面に問われ #短歌
口パクで通りすぎてく自転車と立ち止まるままの警察と黒 #短歌
問いかけにわたしはすこしうなずいてキング牧師をくらべてしまう #短歌
要らぬもの いつものようによけておく ミルクシロップ明日の分まで #短歌
ほんとうのことばを嗤うひとびとはゴミにもなれず散ってゆくのみ #短歌
値札からこぼれた時間かかえつつ駅のベンチにおかれる私 #短歌
胸のなか藤棚よりも重く垂れ埋もれきった木があるならば #短歌
古文よりわたしを深く読むまなざし紙の文字より熱をふくんで #短歌
とぎれとぎれ街の頭上にのこる青 ひとつは君に ひとつは私に #短歌
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