八月のシンデレラナイン朝の光に透けながらうすき影さえ私を連れる #短歌
遠ざかる音は消えても残りいる記憶のなかの鮮やかな色 #短歌
新しい履物は朝おろすもの祖母の響きは今もまぶしく #短歌
湯気のなか忘れたつもりの名がよぎり改名のこと思い返せり #短歌
朝靴を揃えるしぐさ そのたびに昔の声を胸にききおり #短歌
踏み消した火のように月がひとりきり 朝のはじまりをまだ拒む空 #短歌
小さくて蓮の花びらほどの靴 鳴らし続けてわたしの中に #短歌
ひとりきり静かな場所はなくなって耳の奥まで満ちるざわめき #短歌
いなくても幼子の名を呼ぶように玄関先で薔薇は咲きおり #短歌
のばされて甘さのかたち変わるもの 見ているあいだ 午後がやさしい #短歌
明け方の夢の余白に咲く花は誰にも渡さぬ静かなひかり #短歌
電車なぜブルーチーズの匂いして夕方の窓粉雪のよう #短歌
ひとところ並べて垂れる赤キ字を夢にちてなお苺と記す #短歌
飲まれざる瓶は列なす静けさにわが体さえ遠く置かれて #短歌
かなしみは苺のかたちにほそく裂け 愛といふ文字 口に残して #短歌
目が見えずただからだだけまるくして夜の底から息をつづける #短歌
午前零時ひとこと耽ると書きおけばノートのなかに花ひらく音 #短歌
父の袖しずかにすり減り夜をこす 母の名ばかり口にのこして #短歌
悟りとは腹が減ったと言うことか 月もすこしは不機嫌の顔 #短歌
食べものと水のながれるやさしさに仕事をやめて空を見ている #短歌
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