扇風機越しに見えてしまうんだ茹だるような君の輪郭 #短歌
微生物のようにひっそり棲みつく苔と同化した古い間取り #短歌
ぬめるようにホームをなめて最終電車が君をさらっていく #短歌
甘い血がすこしずつこぼれ少年と夕空が溶け合っていく週末 #短歌
廃屋まで風が染み込み傾いてひかりの粒が骨を撫でてく #短歌
噛むなよとそっと囁くその声が包み紙より甘くほどける #短歌
立ち漕ぎのペダルの速さ追わぬまま眺めて過ぎる午後の透明
寂しいと言えない人にだけ見える新種の羽虫そっと肩掛ける #短歌
きんぴらを炒めたあとの静けさに夕暮れひとつやさしく沈む #短歌
忘れた笛 木漏れ日の中鳴り響き望遠鏡だけ鳥を探して #短歌
すれ違うバイクのうしろ声ふたつ夏の曲線そのまま残し #短歌
ペコちゃんがじっと静かにこちら見るミルクこぼれて戻らない舌 #短歌
横断幕ゆらぐ風さえまぶしそう知らぬ名前が跳ねている空 #短歌
虫と共に夜の葉脈をたどりつつまだ名のない灯を胸にひらかせ #短歌
もしひとつ薄荷の窓があるのならそのに吹き込む風を待ってる #短歌
パピコみたいにぷちんと二つに分かれたらあなたといっしょに溶けていきたい #短歌
同じ曲同じ時間で流れだしふたりの鼓動そっと重なる #短歌
目を閉じたような暗さの長い地図 ぽつんと青いふるさとがある #短歌
始発音聞いてしまったこの夜に誰にも言えず息をひそめた #短歌
雲の影こぼれる前に広げたい終わりの見えぬ銀河の地図を #短歌
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