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2025年08月11日20:08

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遍路とへんど

 8月11日 3連休最後の月曜日
 朝から雨混じりの強風が吹いていた。庭に置かれた紫陽花6鉢が半分倒れる。直しても1時間後にはふたたび転がっていた。
 昨日は上京し、親しい作家さんと香川県の名物骨付き鶏の店で会食。56年前に丸亀にある「一鶴」で初めて食べて以来、私はなんとかの一つ覚えのように、食べたい料理を親から訊かれたら「一鶴」の鶏と答えていた。
「一鶴」は幸い、横浜駅近くに出店しているので、食べようと思えば今でも食べられる。
 今回はその「一鶴」ではなく、浅草にある骨付き鶏専門店「一乃亀」へ行った。
 肉質がかなり違っていたけれど、これはこれでいいんじゃないでしょうか。夢中になって食べられた。
 その後近くのカフェで3時間近く、まったりとした会話で愉しいひとときを過ごす。浅草は聞きしにまさるインバウンドで、店内は半数以上が外国人だった。というか、浅草の街をゆるりゆるりと歩いていると、異国に来たような気分になった。国内消費が底の見えない冷え込み状態となった昨今、「外国人ファースト」で国の経済を支えるほか、いまのところ打つ手はないと思う。私が普段泊まっているような一泊5千円の安ホテルは軒並み2〜4割上がってしまったが、これを迷惑と捉えるとますます日本は衰退してしまう。
 
 今日は昨日と一転、不運だった。
 雨があがったタイミングで散歩に出て、スーパーでパンなどを買って大回りして帰宅。で、メールをチェックしたら図書館から予約本が入った、というお知らせ。明日は休館日ゆえ、そのスーパーからほど近い図書館に向いてふたたび、歩き出した。すぐにでも読みたい本だから。
 上原善広著『四国辺土』。
 まさかという内容の本があった。辺土はへんどと読み、お遍路さんのようでいて、その実違う事情を抱えながら88か所を巡礼しているひとを指す”差別"用語だ。乞食、行くあてのないひと、そして戦前まではハンセン病罹患者が行き倒れになるまで歩き続ける道であった。
 先月、松山市在住のミステリー作家宇佐美まことの『恋狂ひ』を偶然のように読んだ。舞台はお遍路で、殺人を犯した若い女が死に場所を求めての巡礼……というような内容だったのだが、壮絶なシーンの連続で激しく心を痛めた。
 読後10日ほどで、図書館にて古川きょうというかたが書いた自費出版本『遍路の果てに』という本を偶然小説棚で見つけて借りた。時代は昭和16年、若くしてハンセン病になった男性が死に場所として選んだのが遍路旅で、『恋狂ひ』より数倍、壮絶だった。ページをめくるのがつらかった。が、一気読み。
 中学高校と屋島にいたので、84番札所の屋島寺はよく知っているし、県内にある札所も3寺4寺と馴染みがある。で、一般的なお遍路さんと違う訳あり遍路(=へんど)の存在を知っていた。のち、自身がサヨクな人となってかつてのハンセン病事情を知るに及んで、ある種おどろおどろしい自分のイメージがフィクションでないこともわかった。
 へんどについて触れた本というのは存外少ない。どう扱っても差別や偏見に繋がる可能性が高く、書き手の立場をきつく問われる問題を孕んでいるからだ。この10年でへんどをテーマにした本は、石井光太の『蛍の森』くらいではないか。
 だからというわけではないのだが、正面からへんどを扱ったノンフィクションを上原善広が書いていることを知って、早く読みたいという思いが募った。
 へんどとは次元を異にするが、四国にはいくつか不思議なパラレルワールドがあって、平家の落ち武者伝説は何十箇所に残っているし、社会から隔絶されたようなムラや集落も結構な数だし、その地区にしか存在しない歌舞伎とか歌などもあるしで、無責任な興味だと思うけれど今になって訪ね歩きたくなっている。私が発掘してデビューとなった坂東眞砂子がまだ生きていたなら、語り合えるのに……。彼女は四国の裏社会やオカルトに詳しかったし、強い思い入れもあった。
 中学・高校の数少ない友人たちに尋ねてみようかな。
 いや、詳しいやつなんていないか。
 家の近くに教恩寺という一向宗の寺院がある。源平合戦・屋島の戦いで源氏方に捉えられた平清衡が鎌倉まで"護送”され、幽閉された屋敷跡に建っている寺だ。好んで散歩中に立ち寄るお寺なのだが、退職後、縁起を知ってずいぶんと不思議な縁だと思った。
 ちょっと歪みのある興味だと自覚しつつ、屋島からへんどや落人伝説や平家(&源氏)の滅亡というような歴史にも関心が芽生えたのも不思議だ。
 ーー自身のルーツにも多少関係があるやも知れない。
 それは先週、親戚が我が家を訪ねてきたことから始まった。
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