「ここが尾根」だと指を置いたあと父が黙る ネコは目を閉じたまま #短歌
街の声よりスープの音が近くなる渋谷の夜を忘れていく夜 #短歌
夜という夜を剥してきたのだろう緑の芽には爪痕がある #短歌
地図にない神社の裏を歩きつつきみの視線を忘れてしまう #短歌
満員の電車の中で目をつむる トランプ一式持ってきた朝 #短歌
花がないだけで気づかなかったけどずっとここに立ってた木だった #短歌
愛してたなんて誰が言ったのよ まるで歌ってなかった顔して #短歌
予告編の最後の一秒だけを見てそれでも泣けるひとのこと好き #短歌
曇り空 見えない空にくちづけて陽と太陽だけが知っていること #短歌
乗りそこねた夏のつづきがあるらしい さよならだけが青く残った #短歌
きょうの空カスタードクリーム煮してしまい誰にも叱られなかった午後 #短歌
だれもわたしに気づかないままこの町がぜんぶ鳴いていた午後 #短歌
エレベーターの鏡にうつるわたし以外の忍者がひとり黙ってる #短歌
みなうなずく係にされて拍手する遠くで餌をねだっている声 #短歌
きょうからはバンドエイドを売りますと言えばあなたの名前が消えた #短歌
決意などなくても発車ベルは鳴る 京王線はやさしいふりで #短歌
減らすことより買うほうがやさしくてマグカップだけ増えていく家 #短歌
生命線ばかりやたらと長い手でとしまえん跡地に地図を描いた #短歌
どうせならひとつくらいは似て欲しい滅菌シャーレの内がわの夢 #短歌
そんなふうに名前を呼ばれたことあったっけなと思う音量 #短歌
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