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2022年09月19日14:42

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メルセデスのタンブラー

 昨日(18日)も今日も、部屋に日光が差し込んできたかと思うと、数十分後にはたちまち暗くなって夕立のような雨が降る。一日の間で目まぐるしく天候が変わるのは人間の一生みたいだ。
 たとえば昨日の土曜、午前10時頃は大雨だった。隣町にあるメルセデス逗子店に電話を掛けて担当者を呼び出したら、本日はおやすみとのこと。困ったなぁ、新聞の折り込みチラシで今週末と来週末にフェアを開催、来場者にはメルセデスの保温タンブラーをプレゼント、というイベントを知って、そのタンブラーが欲しくなったのだ。子どもの頃、偏狭な両親から「コジキみたいな真似は一生するな!」と説教をされたので、今なお卑しい行為に罪悪感めいた負の感情が湧く。
 が、電話に出た人に「チラシに載ってるタンブラーが欲しいんですが……。スマートを見てもらってる○○と申します」と勇気を出して言ってみると、「どうぞお越しください」と。
 バケツをひっくり返したような雨の下、逗子に向かった。
 入り口でタンブラーをもらってソッコーで帰ろう、という予定にしていたのだが、結局はフロントマンに押し切られ、ショールームのテーブルに就いてしまった。若い女性が「お飲み物は?」と注文を取りに来る。ちらっとメニュー表をみて、つい「カフェオレを!」と欲望むき出しの俺。 こういうときはおとなしくホットコーヒーにすべきだろ。
 フロントマンに「ちょっとバツが悪いです」などと言い訳をしつつ、タンブラーを受け取った。が、「○○さんはとても品がいいです。今日もユーザーさんがタンブラーをもらいにいきなり来たのですが、まるでマックのドライブするーと同じです。ウインドウを下げてタンブラーを受け取ったら、そのままお帰りになりました」と。
 メルセデスとしては新規顧客の獲得目的なのだが、こういうグッズをユーザーがもらいに来るケースがとても多い、と彼は言っていたので、救われた。ちなみに、ショールームにあるグッズ売り場にはもう少しシャレたデザインだったがタンブラーが売られていて、4700円だった。
 帰り道、雨はほぼやんでいた。私の気分も晴れだった。
 しかし、この時間、宮崎県の南部は各所で川が氾濫したり、停電になっていた。NHKの災害報道で、田んぼが冠水している映像を映し出していた。稻の穗が水に隠れているので、少なくとも50センチ以上の水位だ。米は売り物になるのだろうか? 
 学生時代、ミルズの『社会学的想像力』という本に感銘を受けたのだが、その中で視点を複数持つことの重要性と「事実を事実として見よ」という言われてみれば当たり前の教えに納得した。床上浸水の住居や川の水に浸かった田んぼの持ち主は今、どれほど途方に暮れているだろうか。そう想うと、メルセデスのタンブラーを手にして喜んでいる自分がバカに思える。
 夕方、午後5時15分頃、1年ぶりにかつての仕事仲間へ電話を入れた。彼も私も同年齢で、同じてんびん座だから、毎年、私から「ぼくら、また歳をとっちゃったな」などと電話するのだった。彼は人の道(倫?)から外れたようなだらしない人間なので、私から電話をするより他にないのである。
 声は変わらず元気そうだったが、経済的な苦境に陥っていた。彼は公共機関の非常勤勤務で糊口をしのいでいるのだが、溜めてしまった健康保険料を区が差し押さえて強制的に給与から天引きされている、と。月11万円しか入らないので、食うにも困る生活のようだ。
 この話を聞いて、また落ち込んだ。おいおい、死ぬなよ。かつての週刊誌仲間はみんなくたばってしまい、生きているのは私と彼しかいないのだ。これは私都合なのだが、彼がいなくなると、その頃の俺を認識している人間がゼロになる。人間の存在は、物理的なものであると同時に、他者との関わりに於いても存立している。
 夜8時から「鎌倉殿の13人」を観た。習慣化しているから観ているのか、面白いから観ているのかは微妙だ。極端に私は暴力シーン、人が死ぬシーンが嫌いで、それがドラマであれ小説であれ、そういう描写があるものを避けるようになった。50歳くらいまでは戦闘的な性格だったのだが、徐々に戦うこと自体がナンセンスに思えてきて、ついには戦うシーンさえ忌避するようになってしまった。しかし、「鎌倉殿」は自己持続性を重視し、最後まで見続けるけど。
 今日はこれから台風の影響が強まってくるだろう。
 つつがなく過ぎ去ってくれますように。
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