アメリカで発生していたコミックバッシングと
1950年代に起きていたアメリカでのコミックバッシング。当時の状況が、徐々にではあるが、日本でも知られるようになってきている。コミックバッシングに付いて、色々調べてはいたのだが、そもそもの理由が、曖昧で、分かり難かった。一体誰が煽動していたのかが、はっきりしなかったのだ。この時期のコミックバッシングは、アメリカを上げての大騒ぎで、コミックという大衆文化が、壊滅状態に追い込まれている。現代の魔女狩りのような様相で、魔女を作り上げて、大勢で火炙りにするその残酷な暴力は、恐ろしいものだ。コミックバッシングには、アメリカ特有の状況が絡んでいることは予想された。それでも、コミックを壊滅させようとまで動くその動機がつかめない。集団ヒステリーに似た症状ではあるが、理解できないというのが本音だった。一方で、アメリカで起こっていた抽象表現主義も、1940年代から50年代にかけて大きな盛り上がりを見せていた。奇しくも、年代が重なる。コミックバッシングと、抽象表現主義、一見何の関係もなさそうな出来事だが、実は、そうではなかった。アメリカの抽象表現主義の、具象絵画や、他のジャンルへの誹謗抽象と、コミックバッシングとの関係性を示す状況が出てきた。コミックバッシングの背景の新しい要素として、当時のアメリカの社会背景と共に、ソ連との冷戦からも大きな影響を受けていたのだ。コミックバッシングと冷戦、これが、無関係ではなかった。アメリカでの抽象表現主義の元凶が、冷戦だったことは知られている事実だが、コミックバッシングも冷戦と無関係ではなかった。今、2022年の2月、ウクライナにロシア軍が侵攻して、ウクライナが占領されようとしているが、冷戦下の日本も、ウクライナと同じような状況になっていたことをご存知だろうか。冷戦時代、ソ連は、北海道侵攻の準備を進めていた。そのため、日本の自衛隊は、北海道に集められていた。当時のソ連も、日本に様々な工作を仕掛けており、日本の共産主義勢力に、資金を提供して、思想的地ならしの準備を進めていた。進撃の巨人では、巨人が、他の国を襲う地ならしが発動されたが、現実の世界での地ならしは、巨人ではなく、思想的に進められていた。世界の共産主義化だ。アメリカは、アメリカの共産主義化を非常に恐れていた。そのため、赤狩りが発動されて、多くの共産主義者が炙り出されていた。冷戦下での核戦争の恐怖、そして、共産主義化への恐怖がアメリカに蔓延していたのだ。これが、美術の世界で、プロパガンダとして抽象表現主義が利用され、具象絵画へのバッシングが起こった原因だ。当時やたらと強調されたのが、純粋や崇高などの、ワードだ。対して、大衆の娯楽を目的としたコミックなどのジャンルは、俗悪とされて否定する。ハリウッドでも赤狩りが起こっており、当時のポップカルチャー、大衆文化は、大なり小なり、バッシングの影響下にあったのだ。アートは、ハイカルチャーで崇高なもの、庶民が楽しむ娯楽などのポップカルチャーは、俗悪なもの、そういうレッテル貼りを行い、実際にバッシングを敢行していく。当時のコミックバッシング裁判をテレビも中継していたそうだ。テレビも、バッシング側に回っていたことは、確かで、政治家や評論家、親、なども、コミックを低俗で俗悪、いわゆる害悪として、社会から駆逐するための運動を進めていた。このコミックバッシングは、日本にも及び、悪書追放の名の元に漫画が叩かれていた。日本のテレビでは、あの、タレントのデーブ・スペクターが漫画バッシングの主張を展開していた。意外に思うかもしれないが、デーブ・スペクターは、バッシングする側の人間だったのだ。当時のアメリカのコミックには、この凄まじい悪意の塊のような魔女狩りに抵抗する力がなく、ほぼほぼ、壊滅状態に追い込まれていく。一方、抽象表現主義のターゲットにされた具象絵画は、イラストと言われ、俗悪のレッテルを貼られて、芸術ですらない、と揶揄された。コミックバッシングと、抽象表現主義の他ジャンルへの誹謗中傷は、同じ目的で発動されていたようだ。そのため、当時の政治家達も熱心に動き、騒ぎは大きくなり、社会を激しい文化的破壊衝動へと駆り立てていった。コミックバッシングと、政府のプロパガンダが、直接的に関係があったかどうかは分からないが、間接的には、無縁ではなかったのは確かだろう。コミックバッシングも、抽象表現主義の暴走も、一連の流れの中で、起こっている。抽象表現主義は、冷戦の終結と共に、純粋芸術のレッテルは剥がれ、意味の分からない絵画に戻っていった。純粋芸術なんて、戯言での虚勢による過大評価は、抽象絵画にとっては、まったく迷惑な話だろう。抽象絵画に悪意はなく、それを利用しようとした連中にこそ悪意があったのだ。ただ、コミックバッシングによって受けた、コミック界のダメージは、大きく、アメリカンコミックは、強い規制によって自由を奪われ多様性を失ってしまう。アメリカで起きたコミックバッシングと、抽象表現主義による、具象絵画や、他のエンターティンメントを見下すような異様な思想は、底の部分で繋がっており、東西の冷戦が強く影響を及ぼしていたことは、ほぼ間違いないだろう。
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