あまりにも暖かななので、やるべきことが山積しているにもかかわらず、昼イチでチェアリングに出かけよう、と思いついた。折りたたみ椅子を持って自分を街とか自然の中に置いてビールを飲む、というチェアリングが先週、朝日の天声人語で紹介されていて、以来、試してみたかった。
1時半頃、逗子マリーナ(地元では逗子マリと呼ぶ)に着いた。川端康成が自殺したのはどのコンドミニアムだろう、とここに来るたび想ってしまう。どこからどこまでが逗子マリか分からない。道路は椰子の並木だから、リゾート感があるし、何棟ものリゾートマンションが建ち並び、結婚式場やプールやカフェが目に付くし、そこをずんずんと海に向かって歩いていると行き着く先はヨットハーバーだ。
雲一つない青空だった。海風は案外と吹いていたが、冷たい風ではないので本を読むに適した気候だった。
ヨットが係留されている前に、5つか6つくらいのテーブルとソファーが並べられたウッドデッキがあって、リゾマンの住人かと思われるご老人がソファーに座ってスマホを見ていた。背後にカフェはなさそうなので、無料の公共スペースのようだ。
折りたたみ椅子を持って来ていたのだが、太陽の熱で温められたソファーのほうが幾倍も心地いいはずだ。いちばん真ん中のソファーに座って、沢木耕太郎の文庫を読み始めた。
30分くらいが経った頃、隣に20前後の女の子ふたり組が手にミルクティなのかタピオカドリンクなのか分からないけどそんな飲み物とケーキを持ってやって来た。しばらく様子を横目でうかがっていると、すぐには食べずにテーブルに置いたスイーツ&ドリンクをiPhoneでいろんな角度から撮っていた。騒がしいけど、リゾート地の陽気さが感じられ、差し引きゼロかな、と感じた。
20分ほど文庫を読み進めたところで読了。
帰り際、まだギャル2人がいたので、「ちょっとお願いが。ぼくが本を読んでいるところをこのiPhoneで撮ってくれないか? 顔は写さなくていい、友だちと写真交換してるんだ」と言って頼むと、引き受けてくれた。
「うーん、椰子の背景、いれたいな」
「なんかかっこいいね」
かっこいいのが私なのか風景なのかは主語がないので分からないが、こういうことを頼んだのは初めてなので、照れる。
撮影が終わって彼女たちに礼を言って、そこから離れた。
iPhoneを見ると、液晶画面がケーキなのかタピオカなのかひどく汚れている。ギャルは可愛いかったが指は汚いのね。俺とは反対だ(笑)。ちなみにiPhoneは昨夜、液晶もケースも除菌したくて拭いたばかりだった。iPhoneはやむなくポケットに入れる前に、携帯していたティッシュで拭いた。
乗って来た原付バイクは公園脇の駐輪場に駐めている。
海沿いに歩いて行くと、観光乗馬体験に出くわした。「もう少し身体を起こして!」なんて指示が聞こえてくる。公園で遊んでいた子どもたちが馬の方へ駆け寄って行くと、お母さんが「あまり近づいちゃダメダメ」などと声を荒げた。
初めてのチェアリングとしては面白いシチュエーションを得られた。次はどこへ行こうかな。
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