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2019年01月29日21:00

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久しぶりの鰻

 夕方からため息ばっかりついている。珈琲が苦い。

 昨日は早期退職仲間3人のランチ会で、闘病中のNさんたっての要望で鰻を食べに行った。ランチとしては値段が高いのだが、「久しく鰻丼を食べていない」などと言われて私も同様であるからして、反対はしない。
 1カ月ぶりに会うNさんは顔色がよく、私よりも元気そう。昨年の秋以来のSも血色がよくて、やむなく私も好調なふりをせざるを得なかった。3人寄れば本の話ばっかで、場所をカフェに移して2時間ほどの間に話題に出た本は30冊以上だった。先日直木賞を受賞した『宝島』をSは高く評価していたのだが、「本が出てすぐに買って読んだ(受賞以前に読んだという自慢だ)」と言われてなぜか沖縄フリークの私はむっとし、解散後にソッコー文教堂書店へ寄って『宝島』を買った。で、晩ご飯前に読み始めてみたら、レベルの高い力作であることがわかる。
 晩ご飯のあと、ランチ会でほんの少し話題になったKに電話をした。Kは定年までにあと1年のはずだが、退職勧告を受けて退社した、というのだ。電話したのはその真相を聞きたかったわけではなく、これまで3人で開いていたランチ会にKも誘ってやろうというくらいの意図だった。Kは東北大出のどうしようもないダメ男で、NさんもSも私も共通して好感を抱いていたのである。
 電話をしたらとても喜んでくれて、これから何をしていこうか思案中だよ〜、と明るい声だった。相変わらずいい味を出していて、我らランチ会の参加メンバーにふさわしい男だ。
 一夜明けて本日。
 玄関の鍵がだんだんと劣化しているので、鍵屋さんに来てもらった。電話である程度費用について聞いていたので、その最低額を前もって銀行でおろしておいた。
 シリンダーを交換。電話説明と同じ料金だったのでほっとした。
 Nさんが家のメンテに金がかかってしょうがない、などとしばしばぼやかれていることもあって、「昨日は愉しかった。何よりお元気そうで。夜、Kに電話を入れてみたら、我々のランチ会にぜひ行きたいと言っていたので、次の機会に誘ってもいいですか? 今日は玄関の鍵で、修理に来てもらいました。家が古くなってくると確かに物入りですね」というようなメールを出した。
 で、ラズリの散歩に出て帰宅したら、Nさんから返事が届いていた。
「鰻は旨かったけど高いねー(笑)。余計な出費、すみませんでした。Kの参加は大歓迎、あのとぼけた会話が楽しみです。さて、本日は通院して抗がん剤の点滴でした。そして先日のCT検査結果を聞きました。残念ながらよくはありませんでした。病巣が大きくなっていて、どうやら第�誼奮�の抗がん剤治療は限界に来たようです。手術するのがいいのか、他の医師と協議するという話でした」というような内容だった。実際のメールには今後のガン治療については詳細に綴られていた。
 メールを読んで一気に明るい気分が萎んだ。Nさんは同じ鎌倉住まいで、同じ図書館に通い、同じスーパーで買い物をし、同じ街を互いに犬連れで散歩する仲間だ。
 三浦半島をドライブして、偶然通りかかった農家の直販所でスイカを買う。額にタオルを巻いたオヤジが「大きいほうが甘いよ」と言うので、それならでかいスイカを買って半分をNさんに持って行くか、と私は考える。で、一個1000円じゃなく1600円の大きなスイカを選び、Nさんに「いま三浦市の農家でスイカを買ったので、1時間後にそのまま持って行くので包丁とまな板を用意しておいて」と電話する。
 私は楽しい、彼も楽しいというような行為は、時に自分を支えてくれるものだ。
 これは去年8月のエピソードなのだが、夜、彼から「食べてみたら新鮮さゆえにジューシーだ!」というお礼のメールが届いた。実際そう書くしかないような不味さで(笑)、タオルオヤジが「甘さは保証する」というのがとんだでまかせだったのである。だからせいぜいが「みずみずしい」と褒めるしかないような代物なのだが、こういうばかばかしさが私には好ましく思える。
 検査結果の診断についてはNさん本人も私も、イマイチ懐疑的で、誤診の可能性がかなり高い気もしている。私はNさんのガンが進行しているとは思わない。治るかどうかはわからないが、皮肉にも私より長生きするものだ、と勝手に思い込んでいる。
 そう思いながら、ため息が出るのだった。
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