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2018年11月27日15:01

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世界は理不尽で不平等でイカれてる

 日曜日、3連休最後の日。
 朝起き出したら、前日に歩きすぎたのとライブでの興奮による疲れを引きずっていて、体が重い。今日は東京流通センターで開催の「文学フリマ」に行く予定だ。東京では年に2回、同人誌の祭典とでも言うべきこのイベントが開かれている。
 珈琲を淹れている時点で、わざわざ足を運ぶまでもないか、などと思ったが、元日の初詣と同様、自分的には恒例行事になっているので、行くだけは行ってみようと思い直した。
 正午少し前に到着。年々参加者(グループ)が増えて、今回は1000に近いブースになったらしい。
 たとえば。

「この世界は理不尽で
 不平等で
 とにかくイカれてる。
 それでも、俺は前へ進んだ」

 などと大書きされたコピーの前に、192ページの私家版文庫が置かれているのを横目にすると、いつの時代も(社会不適応者は)変わらないものだ、と嬉しくなる。著者が手売りしているので、「おまえもイカれてるの?」とからかいたくもなる。
「精神病院に入院してました」という体験本を売っている30歳くらいの男性もいた。彼と真正面で目が合ってしまったので、つい言わなくてもいいようなことを訊いてしまった。
「死にたくなったの?」
 心配になって訊いたことがわかったようで、「はい、そういうことがありました」と彼は実直そうな表情で答えた。
 名の知れた文学賞で最終選考まで残って落選、という小説家志望者の自費出版物を一冊は買う、というのは私の趣味で、千を超える応募作品から最終5作に選抜された小説というのはそれなりに優れている。が、受賞作というのは運と時流が大きく左右される。今年であればLGBTが主テーマだとポイントが加算されるだろうし、もし最終の5人の中に「石田ゆり子を30歳若くしたような美形の女子高生17歳」がいれば、40歳のオッサン・元雑誌編集者なんて候補者は確実に不利になる。出版社も商売だ、なんて言ったら身も蓋もないが、出版物は文化的「商品」なのだからやむを得ない。で、私は力がありながら落ちた人に惹かれてしまうのだ。さらに読んで面白ければ、心の底からエールを送り、名前を記憶に留めておく。今回は第3回、第4回と連続して新潮ミステリー大賞の最終まで行って落ちた1972年生まれの男性の小説を買った。そもそもは純文学作家を目指している、と彼は言っていた。ミステリーも書けるというのは力量がある証左だ。
 大学の後輩もサークルの同人誌を売っていた。ブースにいたのはともに大学1年の女子で、私が在校していた頃とは違ってお嬢様ふう。言葉遣いが丁寧で、そつがない。こういう優等生でしかもルックスがいい子はおじさん受けがするだろうが、言っとくけど私は反抗的な子が好きなのだ。世の中を甘く見るなよ、と心の中で毒づいたのであった。
 2時間ちょっと、見て回ったところで疲れを覚えた。そろそろ帰るか、と出口に向かって歩いていると、真横からいきなり紙を渡され、つい受け取ってしまった。

 あたたかいコーヒーを買うファミマの夜

 こんな一句が載っていた。上手なような、ヘタウマなような。
 うまく売り込みすれば、案外イケるんじゃないか。
 館外に出て喫煙所へ行った。で、iPhoneをチェックしたら、2時間前に畏友からの着信があった。
 なにか話でもあるのかな、と電話をしたら、なんと同じ会場に来ていた、とのこと。今日のイベントについては1カ月も前に彼に伝えていて、「行かないと思いますが、楽しそうな催しですね」と返事をもらっていた。
 なんだ、来ていらっしゃったのですか?
 あちゃ〜、既に会場を出たちゃったのですか、残念。
 iPhoneを鞄の底に入れっぱなしですみませんでした。
 そうそう、筑波大学の文芸サークルも同人誌を売ってましたね。
 えっ、見過ごしましたか?
 iPhoneを切って、タバコを吸い殻入れに捨てた。
 その瞬間、若い男の子から声を掛けられた。
「たまたま隣で電話の声を聞いていたものですから。僕はその筑波大の学生なんです。もしよろしければ同人誌をお渡ししましょうか?」
 1分後、500円の同人誌を無料で受け取った。
 で、私はすぐに彼の携帯に電話をした。
「いま、どちらにいらっしゃいます?」
 それから1時間後、三浦方面へと向かっていた彼と横浜駅で落ち合って、筑波大の同人誌を彼に渡した。いいイベントだった、と彼は満足している様子なのが嬉しい。
 しばらくドトールで会話を交わして別れた。
 少々体調が重かろうと、やっぱ活動的なのがいいな、と実感した一日になった。
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