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2018年11月11日21:12

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ウチナー祭と、その翌晩

 涙もろくて困る。
 昨日、「鶴見ウチナー祭」に行った。鶴見には昔から沖縄県人街があって、歴史をひもとくと1899年から始まって本格的に増え始めたのが第一次世界大戦後の大正前期だという。戦後も鶴見に多くの沖縄県人が残った(沖縄はアメリカ占領地ゆえ郷里に戻れず)。ウチナー祭については、10日ほど前に朝日の湘南版に詳細な記事が載っていて知ったのだった。
 祭りの場所はJR鶴見線浅野駅すぐ近くにある広々とした入船公園で、屋台ブースが100軒ほど設営されていた。芝生には野外ステージが設けられ、数千人がゆったりと座れるくらいの芝生が広がっている。
 私より5歳年長のフリーライターを誘っていて、正午に待ち合わせていた。祭典会場に着いたのは11時過ぎだったので、ステージ前最前列の芝生に座って、既に始まっていた琉球舞踊を眺めた。日舞に似た足の運び、バリ島で見た舞踊と同じような両手の動き、そしてBGMに流れる三線とウチナー語の歌。間近に見ていると、この日は真夏のような陽差しが午前10時くらいから照りつけられていたこともあって、横浜にいるのではなく沖縄へ旅しているような気分になった。それから1時間、固唾を飲んでステージでのパフォーマンスを見た。
 舞踏が終わって次の演目に入る間には、久米島紬観光大使がステージに立って島に2軒ある泡盛の醸造所をPRしたり、MCの女性(沖縄出身のシンガー)が西表島や竹富島、黒島といった「離島」を地図を掲げて説明したりで、飽きない。それにつけても愉快で魅力的なMCだ。観光大使も超美形で、「このあと私はあちら(と左手の方角に向けて腕を伸ばした)の〇〇酒造ブースにおりますので、よろしかったら泡盛を試飲しに来て下さい」などと笑みを浮かべる。下戸なのが残念だ。
 新たな琉球舞踊が始まったところで、知人が来た。
 しばらくの間、黙って舞踊を見た。舞踊が終わったところで、沖縄そばを食べに行くことにした。祭り会場の屋台でもいいのだが、せっかく近くに沖縄人街があることだし、ぶらついて沖縄県民に愛されている地元の店に行こう! 自分には珍しく、事前に情報を仕入れていた。本格的なソーキそばを食べたい。
「うちなーすばヤージ小(ぐわ)」。出て来た沖縄そばも豚の角煮も、那覇で食べたものとほとんど変わらない。これだ、これ。
 知人は沖縄について全く知識がない。多少ボケも入っていて、会話が全然弾まない。が、これはこれでいい。既にオリオンビールを2本も飲んでいて、酔いが回っているのかもしれない。
 そばを食べ終わってふたたび、ウチナー祭会場に戻った。彼は喉が渇いたと言って、泡盛を買った。私はブルーシールのアイスクリームが売っていたので、アイスを買った。これだこれこれ、沖縄の味!
 沖縄民謡の歌手がステージを務めていた。次に日本最南端の竹富町観光大使を兼任するミュージシャン親子が出て来て、陽気な歌を唄い始めた。
 私たちが座っているのはステージのすぐ前で、この一帯は沖縄県人の縄張りで、歌に併せてたくさんの人びとがカチャーシーを踊り始めるではないか。
 先々月、デニー玉城が沖縄県の知事選で勝った際、テレビニュースで彼がカチャーシーを踊りながら喜びを表していた映像を思い浮かべ、不意に涙が溢れてきた。胸が詰まった。
 隣の知人は泡盛がいよいよ効いているのか、とろんとした目つきになっていて、まるで愚鈍のような表情だった。これでいい。涙を見られずに済んだ(笑)。
 4時前までステージを見続けてから、祭り会場をあとにして、JR鶴見線に乗った。
 鶴見は関東大震災時に、朝鮮人虐殺が多数あった街でもある。その証言を基にもう一度、訪ね歩いてみよう。沖縄人街とブラジル人街が重なっている一角もある。ブラジル料理店のランチも食べてみたい。

 本は夜、届く。
 今日、晩ご飯を食べ終えてコーヒーを飲んでいるところで、宅急便が届いた。
 高校の恩師からだった。先々月、先生から歌集や歌誌がまとめて送られてきたときも、配達はなぜか夜だった。
 段ボール箱を開けてみた。私が興味を抱いているジャンルもあれば、先生が好んで読まれたジャンルもある。
 83歳になられる先生は、Twitterでたびたび「終活」について呟かれていらっしゃる。少しずつ本も整理されているらしく、先月、今福龍太の『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』を読みましたか、というメールが届いたので、「昨年、先生がTwitterで取り上げていらっしゃったすばるのソロー特集で今福さんのエッセイを読みましたが、本は持っていません。でも自分で買える本ですから、先生がお手間をとって送る必要などありません」と返信したのだった。
 恐縮の極みである。
 他方、送られてきた本の山を見て、困ったことになったぞ、とも思う。まず、今年中に読めるかどうか? 第2点目はとにかくすべてに目を通した時点で利発そうなふりをした感想を綴らなければいけないというプレッシャー。なんとしてでも先生に「風くんに送っておいてよかった」と思っていただかなければいけない。先生に対する私の敬意を伝え、さらにそこに励ましとシンパシーを含めることが、私に出来る唯一の正しいふるまいだ。
 思えば、高校在学中から先生は自腹を切って私に何冊かのハードカバーをプレゼントしてくれた。今も結局同じことをされている。
 恩返しはまったく出来ていない。恥じ入るばかりだ。
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