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2018年08月09日22:50

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この1週間あまりのこと

 先週から月曜日まで山中湖のおんぼろマンションで無為な時間を過ごしていた。
 第1回の三島賞受賞作は高橋源一郎さんの『優雅で感傷的な日本野球』なのだが、そのタイトルを真似れば「優雅で感傷的な引きこもり」生活で、山中湖村在住の友人と会っていた時間以外は、外部の世界から隔絶された自閉状態だった。状況は学生時代の夏休みに少し似ている。3〜4日、誰とも口を聞かないような日が続き、終日、声にこそ出さないものの心の中でぶつぶつ呟いているか、静かに本を読んでいるか、ひとり飯を食っているかだ。
 初日の夜、手始めに大学の友人から献本された新書を読み始め、翌日の昼前に読み終わって、内容の面白さと平易さと構成力に感心したものだから礼状がてらはがきで感想をだらだらと綴り、わざわざ車を飛ばして郵便局まで投函しに行った。合間合間に、掃除をしたり、タオルやリネンを手洗いで洗濯するといった家事を意欲的にこなしていたら一日が瞬く間に終わる。
 3日目の朝、湖畔にあるファミレス「ガスト」で朝食をとったあと、習慣になっている図書館通い。で、図書館と隣り合わせにある俳句の館「風生庵」へ寄ってみた。何年も前からずっと気になっていた施設なのだが、訪ねる気になったのは太陽が眩しかったからだ(カミュの『異邦人』、ムルソーの殺人動機をパクった)。門の奧の緑が深く、濃くて、神秘的とさえ言える雰囲気に見えたのだった。
 俳句は不案内なので富松風生という俳人も当然知らない。が、庵の室内から草ぼうぼうの庭を見ていると作句なるものをしてみたくなり、入口に俳句ポストと応募用紙が用意されていることもあって、2句、夏の夕方と夜を思い浮かべて作ってみた。ある意味、無礼なやつだと自分でも思う。風生に対しても俳句に対しても興味など微塵もなくて、口からでまかせだからだ。
 4日目、吉田うどんを食べに、富士吉田まで運転した。市の観光協会が発行した吉田うどんマップは持っているのだが、適当に市内を走っていれば見つかるだろう。iPhoneで調べれば評価の高い店までナビで連れて行ってくれる、が、ふて腐れていたのか、かような「親切」を受ける気にならず、最悪、うどん屋が見つからなくて松屋の牛丼を食うはめになってもかまわない、くらいな気分だった。で、中心部の西側を車で回っていたら、本当に1軒もない。途中、車を停めて、道行く高校男子に訊いてみたら、なぜか彼は顔を赤らめ、指で方向を指し示しながら「向こうのほうにあります」とだけ答えた。オレが尋ねたのはうどん屋であって、エロ本屋ではないのに。
 10分後、「みうらうどん」という店で、肉わかめうどんにありつけた。鰹節と鯖節がミックスしたような濃くてどろどろしたダシに、これ以上硬い麺はこの世にないというほどの手打ちうどん。あまりに野卑な食感で、大満足出来た。田舎に来ました感、満載!
 こういうような些細な日常もあったのだが、起きている時間の半分くらいは本を読んでいるか、本を片手に斜め45度の角度で天井を眺めていた。

 話は一気に昨日の午後5時に飛ぶ。
 iPhoneでヤフーニュースを開いたら、翁長知事の病状が悪化・意識混濁という記事があった。この4年間にわたって知事が基地移転問題を日本政府に問い、対決されていることと、任期を残しての重篤ということに対して、心が痛んだ。が、相変わらずナチス親衛隊ばりの安倍狂信者が知事に対して嘲笑するようなコメントが並んでいた。30コメントほど読んでようやくまともな書き込みがあったので、ついその発言に対するコメント、あなたのような意見を読むことが出来て安堵するとともに、感謝さえしたい気持ちになりました、と書いた。
 それから4時間後、翁長知事が急逝した、というニュースをネットで知った。
 私が初めて沖縄へ行ったのは翁長さんが知事になられて2カ月後だった。半分物見遊山で辺野古までクルマを飛ばしたのは、沖縄県民の意を汲んで基地問題に取り組まれている翁長知事に敬意を覚えたからだ。辺野古は名護市の中心部からえらく遠くて、運転するのに往生した。
 辺野古漁港でしばし佇んだ。田舎の海だ。広大な米軍基地キャンプシュワブがあるじゃないか、わざわざ美しい海を埋め立てる必要はあるんだろうか、と思った。基地の移転が県民にとっていいことなのかどうかは、わからない。滑走路を作るのに、沖縄では神が宿っているという海を傷み付けなきゃいけないものなのか。海を前にして、そんな「感傷的」なことをぼんやりと想った。
 まさかこれほど早く翁長さんが亡くなられるとは。
 昼間、長崎の平和祈念式典をテレビのライブで観た。
 田上長崎市長の平和宣言を聞きながら、今年6月23日の全沖縄戦没者追悼式で淡々と話されていた翁長知事の平和宣言がオーバーラップする。否、翁長知事の不屈とも言える顔が見え隠れした。ここに、哀悼の意を表したい。
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