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2017年04月08日17:36

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無料公開に惹かれて「大佛次郎茶亭」へ

 4月8日土曜日、朝から雨。
 正午、NHKのニュースを見る。10分が経って関東ローカルのニュースとなり、テレビを消そうかとリモコンを握ったところで画面が切り替わり、「今日は鎌倉の大佛次郎邸が無料公開されています」とアナウンサーが和らいだ声で原稿を読んでいる。春と秋の年に2回、無料公開があるのだが、それが今日か。「無料」であるのは知っていたが、「無料」に惹かれた。
 焼きそばの昼食を済ませたあと小雨の降る中、ラズリの散歩がてらお寺に行って「釈尊降誕会」(俗に言う花祭り)の会場で、仏様の像に甘茶を掛けて手を合わせる。無心で祈ると、この先に願掛けをしたくなることがあればその願いは叶う、と私はいつの頃からか信じている。
 いったんうちに戻ってラズリに水をあげ、自転車で大佛邸へ行く。距離にして1キロもないので、歩くと10分、自転車だと数分だ。うちを出るときは霧雨程度だったが、大佛邸に着く頃にはけっこうな雨になった。
 入口で鎌倉風致保存会のかたから大佛次郎茶亭のパンフレットをいただき、邸内に入った。無料公開だから人が溢れているかと想ったのだが、それほどでもなかった。傘を持たずに来たので、濡れて寒い。入口からほど近いところにあった濃い桃色のツツジが、目に鮮やかだ。ダウンベストのポケットからデジイチを取り出してツツジを撮るも、みるみる間にカメラに雨が降りかかって気がきではない。
 邸宅は中に入ることも出来るようだ。庭から眺めていると、次々と客が茶室に座り、お抹茶をいただいている。料金は1300円らしい。女子校の制服はまったく見分けがつかないのだが、いかにも女子校茶道部といったふうの若い女の子が茶碗を手にいただいて、客人の前に正座で座って頭を下げている。ポニーテールが似合っていた。外国人観光客がお抹茶をどう飲んでいいのか戸惑っている様子と併せて、人間らしい気持ちになる。もてなすことももてなされることも、いいものだ。
 邸内には桜の木も1本あって満開だった。写真を数枚撮った。が、そうこうするうちに雨はさらに強くなって、全身びしょ濡れになり始めた。寒いほどではないが気持ち悪い。
 10人くらいのグループにシルバーボランティアのガイドさんが「大正8年に建てられた茅葺き家で約100年前となります」と説明をしているのを聞きながら、なおも写真を撮った。雨の鎌倉は風情があっていい。
 入ってから15分ほどして、出た。
 と、風致委員会のかたに断って門のすぐそばに駐輪させていただいた私の自転車に、雨傘が掛けられていた。予期していなかったので、えっ?と一瞬、思った。
 風致委員会のひとは私を見るなり、「雨が強くなってきたので、濡れないようにと……」と声を掛けた。
「ありがとうございます」と礼を言ったあと、「傘を仕舞うの、ちょっと待って。こんな風景、めったにないから写真2枚くらい撮ります」と私は照れながらお願いし、シャッターを切った。で、カメラをポケットに収めたところで、傘を畳んでいただいた。
 申し訳ない気持ち半分、嬉しい気持ち半分だ。そもそも門のすぐそばに駐輪させてくれただけで、入邸前に私は感謝していた。その上、傘を差し掛けてくれていたのか、なんて思うと、この恩を他の誰かに返さなくちゃと律儀な気持ちになるのだった。
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