11日、ハイヒールのはてな?は、ホスピス。終末医療とも言われる。主にガンとの死力を振り絞った戦いが終わり死を待つ患者さんを受け入れる施設だ。もう、戦わない。死を受け入れ、その時を静かに待つ。抗がん剤治療は辛いと良く言われる。非常に強い副作用に苦しめられ、生きる全てをガンとの戦いについやす。食欲もなく、食べたいものも食べられない。末期ガンは、激しい痛みを伴うが、それを強力な薬で抑え込む。抗がん剤のような副作用がないため、食欲が出てくるのだと言う。患者さんは、穏やかな顔になり、家族が見舞いに来ると嬉しそうに微笑む。ホスピスの平均入院期間は3週間。そんなホスピスで、リクエスト食を始めた病院がある。週に1回、好きなものを食べられるのだそうだ。病院では珍しい刺身や寿司も食事として提供される。もちろんステーキでも焼肉でも、すき焼きでもOKだ。痛みが治まり、死を受け入れた患者さんは、楽しかった思い出とともに生きようとする。人生の中で、こんな楽しい事があった。その時に食べた料理が忘れられない。家族に何かいい事があった時は、みんなで、いつも、すき焼きを食べた。人は、楽しかった時に食べたものを、ことさら美味しいと感じる。その料理を食べると、楽しい思い出が蘇る。辛い事や嫌な事があった時は、食事の味は消える。口の中に入れた食べ物が砂に変わるのだ。そんな食事は、もう食べたくないと思う。嫌な事が思い出されるからだ。人は記憶と共に生きている。食事に行った時に、その店で嫌な思いをすると、それが記憶として刻まれる。人は、そんな嫌な記憶と重なった料理を避けるようになっていく。その店で嫌な思いをすれば、そこにある料理が、嫌な記憶と重なるようになっていく。お客さんに粗相をしてしまうのは仕方がないだろう。だが、その店での体験を嫌な思い出としてお客さんの記憶に残さないように努力する。名店の料理が美味しいのは、ただ、腕の良い料理人、良い材料が揃っているだけではない。心地よい空間と楽しい時間がそこにあるからだ。嬉しい事があった時、あの店に行って食事をしよう、そうすれば、嬉しい記憶がさらに美味しい料理で膨らんでいく。良い思い出と美味しい料理が重なっていく。そして、最後を静かに迎える患者さんは、そんな楽しかった思い出とともに、その店の料理を思い出すのだ。そのお店とその料理は、その人の人生と共に生き、そして、喜びを共にしていた。料理人にとって、こんな嬉しい事はないだろう。こんな幸せな事はないだろう。その人は、楽しい食事の思い出と共に、此の岸からかの岸へと向かわれる。
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