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2015年12月31日21:19

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大晦日に寄せて『望みは何と訊かれたら』

 今日もこの時間までに2度散歩に出た。
 MacBookを置いている円形のカフェテーブルのわきに、未読の本を積んでいる。数えてみたら22冊もあった。文庫&新書でひと山、単行本でひと山。夕方、自分が何を読みたいのか分からないので、文庫&新書の山のいちばん下にあった本を取り出したら、池内紀さんの『なぜかいい町 一泊旅行』(光文社新書)だった。いい町と一泊の間は半角アキで、前後をそのまま続けると意味がつかみづらいがかといって全角アキにしたらタイトルらしく見えない、という編集者と著者の考えが伝わってくる。半角のスペースにするか全角のスペースにするか、というのは私もこだわっていて、自分のフルネームを書く際も姓と名の間は必ず半角にしている。美的に全角なんてあり得ない(笑)。
 池内さんの旅エッセイは、私の先生。旅の仕方はもとより、町や自然や歴史の見方といった基礎知識や、人生のさぼり方とか貧乏礼賛といった要らぬ知識まで教えてくれる。もし現代の良寛は誰か? と問われたら、「池内紀さんです」と私は答える。もっともこんな質問をされることは死ぬまでないだろうが。
 新書には16の町が取り上げられている。いずれも小さな町で、ほとんどの日本人は町の名前さえ聞いたことがないか、新聞で町名を見たことはあるが読み方さえ知らない、無名の田舎町だ。たとえば宮城県登米郡登米町。読み方はとめぐん・とよままち。郡と町で同じ漢字で音が違う。小中学校はとよましょうがっこう、とよまちゅうがくで、高校はというとめこうこう。役場はとよまなのに警察署はとめとなる。町の中心街を歩いていると警察資料館があった。警察関係に興味がないので通り過ぎようとしたら、受付のおばさんに手招きされて池内さんは入館してしまう。そのまま逮捕されたらミステリー小説の書き出しになるがむろんそんなことはなく、全国でもここだけしかない昔の留置場の復元があって、池内さんは頑丈そうな格子とか錠に触れ壁の厚みや天井の低さにおののき、「青少年に精神訓話をしたりするよりも、留置場見学をさせるほうが非行防止に役立つのではあるまいか」などと感想を綴っている。
 小さな町というのは機能でも文化でも小さな完結がある。鎌倉も小さな町のひとつと言えるのだが、駅を中心としてわずか300メートルの円を描くと、市役所、郵便局や各種の銀行、本屋3軒、スーパー4件、画廊数軒、喫茶店や食堂は無数にあって、1年間鎌倉軟禁生活を余儀なくされたとしてもまったく支障がない。むしろ市外に出ないほうが安全で快適なくらいだ。わざわざ旅に出なくても、ただの石ころひとつに謂われがあったり鷺(詐欺ではない)や鴨が飛んできたり桜も紅葉も楽しむことができる。もちろん、近所の石碑を無理して読む気にならないし、あらたまって寺巡りをすることもないのだが。
 来年は今年の延長でしかないのかな。それとも心を改めれば前進できたり、逆に怠けていたら体はなまり頭はボケる一方なのかな。
 すこやかな一年になりますように。未明の初詣で祈ることは他にない。
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