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2015年05月23日23:31

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犬を飼うということ

 ラズリがうちに来て2年4カ月。が、相変わらず私がベッドから起き出す瞬間、尻尾を左右に大きく振って、私に飛びかからんばかりに体全体で喜びを表す。一日くらいサボってもいいのに、これが毎朝だ。私は何につけてもパフォーマンスするのが苦手なので、またかというような顔をするのが通例なのだが、今朝は名前を呼びながらラズリを組み敷いて、「どうだぁ、参ったかぁ?」などと声を掛けたら、尻尾が床を叩くように上下して、カンカンカンと床が鳴った。尾っぽの骨がフロアに当たる音だった。
 幼稚園に入学した頃からこうして犬の上に覆い被さって体温のぬくもりを感じるのが好きで、それが嵩じて後年、女の上に乗ることも好きになったんだろうと思う。それはさておき、高校3年の1年間、親が転勤で一人暮らしとなり、ある事情から25キロくらいの大型犬と一緒に暮らすようになった。噛み癖のある犬なのだが、適度に体重を掛けて覆い被さるとちょっと抵抗しながら顔以外の箇所を甘噛みし、やっぱ嬉しそうだった。こいつがそばにいてくれたおかげで寂しくなかったし、生活も乱れなかった。当時はドッグフードなんてない時代だから、私が朝晩、食事をつくってやらなければいけなかったし、人を噛む獰猛さが潜んでいるのでそれなりに私がかまってあげないといけない犬だった。犬と取っ組み合いに近いじゃれ合いをしている時間は、童心に返る。
 で、コーヒーを一杯飲んで新聞をざっと読んで散歩に出る。大きく町内会を一周したら30分くらい。小さくだと20分前後。今朝は普段よりさらに大きな円周を描くようなコースで、40分くらい歩いた。
 ラズリのことを書こうと思ったのは、週に1度は訪ねているボーダーコリー・レスキューのボランティアさんブログを今朝、読んだからだ。私と同じ年齢で徳島出身、東京在住の女性。彼女は引き受け手がないような老犬、扱いづらい獰猛犬を主に預かって、新たな飼い主を見つけるまでずっと仮母をするボランティアの人だ。
 推定12歳で全身が病いに冒されているボーダーを預かって、1年近い。
 が、毎日更新するブログに心打たれた人がいたようだ。あと長く生きても2年という老犬を飼いたいという飼い主さんがとうとう見つかった。
 お嫁入り道具にあれも持たせよう、これも持たせよう、と彼女は気を配った。そしてシャンプーもし、さああと数日で引き渡し、というところで、老犬はいきなり苦しみだして、獣医に慌てて連れて行くも、犬はあっという間に亡くなってしまったのだった。一週間ぶりでブログを読んで、驚くとともに、気持ちまで凹んでしまった。彼女がいかに愛情を注いでいたか。どれほど苦労していたか。
 死因は公園の地面に落ちていたトウモロコシの芯を拾い食いしたことによる腸閉塞だった。彼女は悔やみに悔やんだ、自分のせいだと。もうちょっとでさらに幸せな落ち着き先で余生を送るはずだったのに、それを叶えさせられなかったのは自分の不注意のせいだった、と書いていた。
 ブログを読んで、私はまず自分のことを考えた。私の性格こそ不注意きわまりない。
 恐くなった。自分の不注意から災厄を招く可能性が高い。
 ラズリとは狎れきっているが、その分、反比例して散漫になっている。いや、そんなことより、彼女の心の傷のほうが心配だ。なんて痛ましいことだ。
 老犬は最後の最後まで彼女のことが大好きだった。だから幸福だったと思う。
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