『タイガーマスクW』有終の美

「タイガーマスクW」全38話

気になっていた作品を最後まで見られて嬉しい。近年のレジェンド復刻作の中では、抜群の出来だった。旧作へのリスペクトは不可欠だが、昭和の世相だからこそ成立した話を、今そのまま作っても仕方がない。伝説の味わいを残しながら、新しい作品として復活させる。言うは易く行うは難し。失敗した作品は山ほど思いつくが、成功作はきわめて少ない。本作は希少な成功例だ。

ショービジネスと勝負の両面を描き、実に見ごたえのある現代的なドラマを作ってくれた。終盤の虎の穴との決戦は、素晴らしい迫力だった。タッグ・6人タッグを混ぜて五戦やるという説明を聞いて「なんかヌルいなあ」と考えたが、そんなことはない。限られた手駒をどこで出すかと言う面白みがあって、単なる勝ち抜き戦より盛り上がった。37話のラスボス戦は、現実の名勝負もかくやと思わせるほど手に汗握った。前回の必殺技はいまひとつだったが、第二必殺技タイガー・ファングは素晴らしい。サンドイッチ状に頭部を蹴るのは、衝撃が外へ逃げないからとても危険だ。まさに必殺だ。

37話でタイトルの真の意味が判明する。これだけ感動させてまだ一本残っている。と思ったら、最高のプレゼントが待っていた。いやあ、あの子には主演女優賞を差し上げたい。おしり見せマッチなんて可愛すぎだろ。見せないけど。Wで描かれた女子プロレスは、華やかで絶妙の彩りになってくれた。ヒロインは主人公の特訓に付き合っている上に、暇さえあればサンドバックを蹴っている。丁寧な描写があるから、「実は強い」という展開に説得力が生まれる。変なアイドルプロレスアニメなんかより、ずっと上出来だ。

これから現代に昭和のヒット作をリメイクするなら、本作を手本にしてほしい。★★★★