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2016年04月14日09:27

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荒木奏美 オーボエ・リサイタル

(4月12日、上野学園 石橋メモリアルホール)
 伸びやかな美しい高音と艶やかな音色の持ち主、自然体でスケールの大きいオーボエ奏者という印象を持った。藝大在学中の昨年6月東京交響楽団首席オーボエ奏者に就任。同年10月、第11回国際オーボエコンクール・軽井沢で日本人初の第1位[大賀賞]を受賞という順風満帆の中、今日は彼女にとって初のリサイタル。バッハから古典派、ロマン派、そして現代曲と多彩なプログラム。

 前半は緊張したのか硬さが感じられたが、後半最初、上記コンクール課題曲、細川俊夫の「≪スペル・ソング ─呪文のうた─≫オーボエのための」を聴いて、風がいっぱいに吹き渡るような演奏に魅了された。「ブラヴォ」という声は細川本人ではなかっただろうか?振り返ると立って拍手している細川俊夫がいた。この曲は今後も荒木奏美の看板曲となるのでは、と思わせる良く練れてダイナミックな演奏だった。
東響の気心の知れた仲間達(ヴァイオリン:水谷晃、ヴィオラ:青木篤子、チェロ:伊藤史嗣。いずれも首席)とのブリテンの「幻想四重奏曲」は安定した演奏。続くモーツァルトの「オーボエ四重奏曲」第2楽章アダージョはもっと聴いていたいと思わせるほど美しく、第3楽章の速いパッセージのスムーズな流れもよかった。ただ、モーツァルトを初めて吹くという荒木は他の3人と有機的に混じり合い深みを出すというところまでは行っていなかったように思う。
 ピアノの宇根美沙惠とのパスクッリ「≪椿姫の楽しい思い出≫では超絶テクニックみせる。アンコールのモリコーネ「ガブリエリのオーボエ」(MINAMI編)」は再び東響の仲間と演奏したが、素直に美しいと思わせる清々しさが印象的だった。

ただ課題もいっぱいある。1曲目バッハ「フルート・ソナタ(原曲ホ長調)BWV1035」は緩急が極端で、緩やかな楽章ではよく歌うが縦の線や構造があいまい。速い楽章は歌うことができず、スピードに流されてしまう。シューマンの「幻想小曲集」も無我夢中に楽譜をなぞるばかりで、ロマンティックな情感がうすい。これらの曲ではピアノとの対話や一体感もあまり感じられなかった。ピアニストにも課題があるかもしれない。しかし、20世紀イタリアの作曲家スカルコッタスの「ソロ・オーボエとピアノ伴奏のためのコンチェルティーノ」は作品との相性がよいのかピアノともども躍動感があり、生き生きとしていた。
 可能性や伸びしろの大きいことは間違いないので、これからの活躍が楽しみなアーティストだ。

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