5月29日 すみだトリフォニーホール)
前半がモーツァルト(歌劇「イドメネオ」序曲、ピアノ協奏曲第27番)、後半は下野が子供の頃から好きだったという序曲集。下野の選曲は少し凝っていて、オーケストラが良く鳴るニ長調ばかり、しかもふだんなかなか聴けない作曲家の作品、エロールの歌劇「ザンパ」、ボワエルデューの歌劇「バグダットの太守」、オーベールの歌劇「フラ・ディアボロ」にオッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲というもの。
下野はユーモアたっぷりに曲解説をし、アンコールにはオッフェンバック「天国と地獄」のカンカンが演奏されたが、下野は女性の楽員ふたりにボンボンを渡し、一緒に踊るというサービスぶり。事前の打ち合わせはなかったとのこと。客席は手拍子で盛り上がった。楽しいコンサートだったが、下野の指揮は綿密なリハーサルに裏付けされたと思われる精妙なもので、オーケストラの各楽器のバランス、タイミング、音色は見事に整えられていた。
前半のピアノ協奏曲でもしっとりとしたオーケストラの弦の響きが印象に残った。菊地洋子のピアノはクリスタルな響きで美しいが、もう少し内面まで踏み込んだ演奏を聴きたいと思った。
(c)Naoya Yamaguchi
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