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2024年02月25日13:48

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2/23 ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家@東京オペラシティアートギャラリー

いつ雪に変わってもおかしくない寒い雨の日。こんな日に出かけなくてもいいのだが、丸々4日間外に出ていない、つまり、4日合わせても百歩も歩いていないのはまずかろう、と、家から駅まで10分弱歩けば、あとは電車に乗って10分、濡れずに見られるこの美術館に行くことにした。

もともとこの展覧会は、見に行く予定でいた。なぜなら、コンセプトがとても面白いから。
きっかけは、ガラス作家が自身の作品集を作るにあたってあるプロジェクトを実施。

ガラス作家・山野アンダーソン陽子氏が、静物画を描いてほしい画家18名に「描いてみたいガラス食器」を聞く。

画家たちは、それを絵ではなく「言葉」だけでイメージを伝える。

山野氏はそれらの言葉をもとに、ガラス食器を制作する。

画家はできたガラス食器をモチーフに静物画を描く。

写真家・三部正博氏が、画家たちのアトリエを訪れ、絵とガラス食器を撮影する。

デザイナー・須山悠里がアートブックを制作。


今、私は昨年の写真展をもとに文章を書き足して作品集を作ろうとしている。相棒はブックデザイナーの松本孝一氏。何度か話し合いながら試行錯誤。少しずつ形が見えてきたところだ。だからというわけではないが、こうしたコラボレーションには興味津々。イメージを伝え合う過程で生じるズレは予期せぬ発見を生んでくれます。こんなワクワクすることはあるかしら。

会場は写真撮影可。いつものようにゆったりみられる展示室。人も多くない。
壁には番号だけで作品のキャプションはない。ただ、どういう言葉を画家からもらって作ったか、などの山野氏の言葉が所々印字されていて、鑑賞者はガラス作家と画家のコミュニケーションを想像しながら、作品(ガラス食器と絵画)の間を行ったり来たり楽しめる。
一方、アトリエで撮影した三部氏のモノクロの写真においてそれらのガラス食器は、彼らの仕事場に溶け込み、作品ではなく食器としての存在を強め、鑑賞者はここでも、非日常(アート)と日常の間を行き来することとなる。

さらにいうならば、続く階上の展示室においては「静物画の世界」と題して所蔵品展が展開され、幻想的で不可思議な作品にとっぷりと浸かれる。
ギャラリー全体が静謐な静物画の空気に包まれているようだ。充実した1日となった。

山野氏はスウェーデン在住。ガラスは全てクリアガラスで、実際に食器として使うごくシンプルなものだ。一見して工業製品のような形ではあるが、一つ一つが手作り、手吹き、手回しで作られている。
「万が一作り間違えたり、気に入らなかったとしても溶かし直し(リサイクル)できます。ゴミとして廃棄しなくていいのは、作ってる側としては気持ちが落ち着きます。」
第一展示室の正面には制作風景の映像(センナイ・べルへ氏作)が大きく映し出されているが、溶けて自在に形を変えるガラスの曲線が非常に美しい映像で、見惚れてしまった。

https://www.operacity.jp/ag/exh270/
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この展覧会の出発点は2013年にさかのぼります。スウェーデンを拠点に活動するガラス作家・山野アンダーソン陽子が、「ガラスの作品を本にしたらどうか」と提案を受けたことをきっかけに、アートブックを制作する「Glass Tableware in Still Life(静物画のなかのガラス食器)」というプロジェクトがはじまりました。
スウェーデン、ドイツ、日本を舞台に展開したこのプロジェクトは、とてもユニークなプロセスで成り立っています。山野が18人の画家それぞれに声をかけ、画家自身が描きたいと思うガラスを言葉で表現してもらい、その言葉に応答して山野がガラスを吹きます。できあがったガラスを画家が静物画に描き、写真家・三部正博が画家のアトリエを訪れて絵画とガラスの写真を撮影し、デザイナー・須山悠里がアートブックのかたちにしました。

本展では、このプロジェクトで生まれた、宙吹きならではのわずかな歪みが美しいクリアーガラスの器、画家たちによる親密な絵画、浮遊感をたたえたモノクロームの写真、山野のアトリエでガラスが生まれる瞬間を撮影した映像作品が並びます。また、所々に配されたガラスや画家にまつわる言葉は、山野がこのプロジェクトを振り返ってエッセイにまとめたときに紡いだものです。これは言葉によるコミュニケーションを介在したプロジェクトの痕跡であり、ガラスと絵画と写真にまつわるストーリー思考する一助となるでしょう。それぞれの物語を想像しながら展示を楽しんでいただければと思います。

[参加作家]
ガラス:山野アンダーソン陽子
写真:三部正博
絵画:
アンナ・ビヤルゲル、アンナ・カムネー、イルヴァ・カールグレン、イェンス・フェンゲ、カール・ハウムド、ニクラス・ホルムグレン、CM・ルンドベリ、マリーア・ノルディン、レベッカ・トレンス、石田淳一、伊庭靖子、小笠原美環、木村彩子、クサナギシンペイ、小林且典、田幡浩一、八重樫ゆい、ほか
映像:センナイ・べルへ


写真撮影可なので、沢山撮ってきました。よかったらアルバムを見てください。
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121069146&owner_id=2083345

一部紹介。

CM・ルンドベリ(ミッケ)のリクエストは、家で使いたいから、と眺めと丸めのピッチャーをリクエスト。
山野アンダーソン陽子の作品
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CM・ルンドベリの作品
どうやら割っちゃったらしい…
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三部正博の作品
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NYに住む八重樫ゆいさんのリクエストから、自分のスウェーデンでの生活と重ねて、冬の暮らしの場面を想像しながら作ったという作品。
山野アンダーソン陽子と三部正博の作品
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八重樫ゆいの作品
暖かい赤だ
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「できる限り安定感のあるドリンキンググラス」というリクエスト
マリーア・ノルディンの作品
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山野アンダーソン陽子の作品
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三部正博の作品
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木村彩子氏の言葉「花が開く寸前の蕾」「ふっくり」「真っすぐには伸びていない茎」「ゆるやかな動きのある脚」から生まれた山野アンダーソン陽子氏の作品と制作映像
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木村彩子の作品
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三部正博の作品
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山野氏の器の魅力は、影。透明なはずのガラスの器に光を当てると複雑にして玄妙な影を作る。ツルッとしたように見える表面は、影になると、轆轤をひいて、或いは、手捻りで作ったお茶碗のような微妙で繊細な表情を表す。ガラスは光と最も仲良くできる魅力的な素材だ。
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イルヴァ・カールグレンのリクエストで作った器を撮った三部正博の作品
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イルヴァ・カールグレンの作品 
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東京都美術館で見た伊庭靖子氏もまた選ばれた画家の1人。眩い光の中で何気ない日用品をリアルに描くことによって幻想的で静謐、深遠な世界を作る。
伊庭靖子作品展の日記
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973247441&owner_id=2083345
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983995839&owner_id=2083345

彼女のリクエストであった言葉「振出し」、山野氏もその言葉を知らずに調べたというが、私も同様(恥)
伊庭靖子の作品
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「フェローシップ(fellowship、共にすることの意)というレベッカ・トレンス氏のリクエストに対しては、カクテルを混ぜる「ミキシンググラス」を作る。
「向こう側を見る『窓』としての器」というクサナギシンペイ氏のリクエストには背の低いシリンダー型グラスを作る。それぞれの理由は、詩的な想像。まるで、連想ゲームのような、あるいは連歌のような楽しさだ。
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アンナ・カムネーは、描きたいガラスの食器を言葉で説明した後、そのガラスの完成を待たずに描き始めたという。出来上がった絵と食器は見事に一致していた。
アンナ・カムネーの作品
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三部正博の作品
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銀座を歩いていてたまたま入った画廊でファンになった石田淳一氏の作品もあった。
石田純一作品展の日記
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982364963&owner_id=2083345

山野氏は「石田さんの作品にある、人の痕跡のような深みを意識して制作した」と述べている。
石田淳一氏の作品
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最後の通路展示室では、三部正博氏の写真が並ぶ。これがまたいいのだ。すごく好み。
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出来上がったアートブックがこちら
フォトフォト

3月24日まで

アルバムあります
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121069146&owner_id=2083345


続く寺田コレクション「静物画の世界」
https://www.operacity.jp/ag/exh/detail.php?id=296
今回の収蔵品展は、企画展「ガラスの器と静物画山野アンダーソン陽子と18人の画家」にあわせ、当館の寺田コレクションの中から静物画を紹介する。静物画とは、卓上の瓶や花、果物など、周囲にある物を題材として描く絵画のジャンルである。歴史的には17世紀頃に西洋絵画のいちジャンルとして確立したが、富や豊かさの象徴として蒐集物を描いたり、モチーフに特別な意味や思いを込めたり、また特に近代以降は、対象の形態把握や色や形による画面構成の実験としてなど、さまざまに静物画が描かれてきた。当館コレクションを代表する画家のひとりである難波田龍起も静物画を描いている。そこには、対象の形態を単純化して捉えようとする抽象への指向や、難波田が抱いていた古代への憧憬をみることができる。静物画を多く手掛ける五味文彦の作品は、緻密で写実的でありながら、常にどこか非現実的な空気を漂わせている。あるいは、河原朝生や小杉小二郎の作品は、静謐で独自の詩情を湛えている。いずれも画家は共通して身近にある物にまなざしを向けているが、その多様なあらわれに静物画の魅力があるといえるだろう。
また、寺田コレクションには「幻想的な絵画」ともいえる特徴を持つ作品群があるが、静物画の中にもそのような幻想性をみることができる。たとえば、川口起美雄や坂田哲也、藤野一友の作品は、文脈をずらすことで見る者に違和感や驚きを与えるシュルレアリスム的手続きがとられている。河内良介や落田洋子の作品は、静かだった物たちが生き生きと動き出すようなファンタジックな空気に満ちている。テーブルの上の瓶や果物をじっと見ていると、次第にそれらが山や建物に、テーブルがひとつの街のように見えてきたことはないだろうか。身近な現実が少しずらされ、不可思議な世界が立ち現れてくるような、寺田コレクションの静物画の世界をぜひ楽しんでもらいたい。


小杉小二郎の作品に惹かれる
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超写実の大御所・五味文彦のコレクションもすごい
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不思議な空気の河原朝生は印象的で2度目
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落合洋子も不思議な世界を作っている
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鉛筆画の河内良介も
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エッチングの河原田徹も非常に緻密でくらくら。
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静物画といえども、寺田コレクションはなかなかクセがあって面白い。

こちらも3月24日まで

アルバムに載っています
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121069146&owner_id=2083345

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