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2024年05月20日15:35

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5/18 青山悟 刺繍少年フォーエバー@目黒区美術館

3月に世田美でみた「美術家たちの沿線物語 小田急線編 京王・井の頭線編」で気になった現代美術作家・青山悟は、工業ミシンを用いた刺繍絵を制作、そこにはなにがしかの批判、問題提起、皮肉なんかも込められているようで、刺繍だけにチクッと刺さるものがある。面白そうだなと思ってたら、マイミクさんがひと足先に観覧、面白いよ!とお墨付きをもらった。

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思ったより人は入っていたが、ゆっくり鑑賞できるレベル。
1階は、青山氏が本展の前に五本木小学校の児童と一緒に作り上げた大作が展示。五本木小学校?もしかしたら母の母校かも?次回面会の時に聞いてみよう。覚えていてくれたらいいけれど。


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イベントスペースには、青山氏が使っているミシンが展示されて、そして受け取ったばかりと思われるご友人からのエアメールを作品にしたものが吊るされていた。
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そう、会場は全て撮影可。

アルバムを作りましたので、どうぞ。
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121171642&owner_id=2083345

作品リストはおいていないが、声をかければもらえる。マイミクさんが言っていた通り、所蔵先の中に「高橋龍太郎コレクション」がいくつもあった。高橋氏は日本屈指の現代アートコレクターだ。

二科会の重鎮だった画家・青山龍水を祖父に持つ氏が、ファインアートの道を選ばず、工芸、しかもその担い手がほぼ女性労働者である刺繍(しかも手刺繍ではなく工業ミシンを用いて)という方法を選んで作品を作り発表する多重的な意味をはっきり知ったのは、今回の個展であった。技術的・労力的なことに対する驚きや感動だけでなく、そこに込めた意味合いの深さや多重性にすっかり夢中になってしまった。さすが、高橋氏がコレクションするだけはある。うまく説明できないが、いくつか紹介したいと思う。

https://mmat.jp/exhibition/archive/2024/20240420-427.html
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「永遠なんてあるのでしょうか」。
この言葉は、青山悟が近年取り組んでいるテーマ、時代とともに 社会から姿を消そうとしている様々な「消えゆくもの」への問い かけのメッセージです。
青山は、目黒区出身の現代美術作家です。彼は、刺繍というおよそ美術作品の制作のために用いる技法とは程遠い手段で作品を制作しています。手仕事としての刺繍が、ミシンという工業機械に取って代わられることには、現代社会における労働や資本主義の問題が示唆されると同時に、ミシンで大量生産される製品と美術作品の違いとは何かという問題も示されています。さらに青山の作品は、刺繍は女性がするものという伝統的な男女の役割に対しての問題も浮かび上がらせます。50 代である青山の展覧会名のサブタイトルが「刺繍少年」となっていることには、ジェンダー、エイジズム(年齢差別)の問題も暗示されています。青山は、刻一刻と変化する私たちの生きる社会が抱える様々な問題に対し、常に敏感に反応し、ミシン針でチクリと風刺をきかせます。
この度は、目黒区内の青山の出身校を描写した初期の作品から新作までを展示します。


1 初期の作品よりー目黒より愛を込めて

2003年《クローバー》
ポリエステルの薄い布に、ミシンで下絵に沿って絵を描くように、空間を塗るように縫っていく動画を見た。工業用ミシンは布の押さえがなくて、刺繍枠に張った布を動かしていく。正面遠くから見ると刺繍だとは思えない。
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2005年《東京の朝》
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2 About Painting
名画を刺繍で製作し、横軸に「Personal - Social(個人的ー社会的)、縦軸に「Radical - Conservaite(急進的ー保守的)」の評価軸のチャートの上に作品を配列。1点ずつの傍に青山の解釈が自筆で書き込まれている。
目黒区が所蔵する作品や祖父・青山龍水の作品も挙げられて入り、原作の展示もある。
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例えば、《形見の直垂》で有名な川村清雄の《鸚鵡》は「やや個人的ー急進的」に属している。
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同じモンドリアンでも、75年も逆さに展示されていた作品は「社会的ー急進的」だし、
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イヴ・サンローランが絵の具の質感を無視してイメージだけを取りだしテキスタイルにしようして以来ポップアートのように扱われたこの作品は「社会的ー保守的」に分類されている。
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刺繍にして名画を取り込んだ青山が、独自解釈するのは面白い。

ロセッティ(保守的)の解釈には笑う。
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祖父・青山龍水(個人的ーやや保守的)
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3祖父・青山龍水へのオマージュ
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2010年青山悟/青山龍水《政治家と黄色いセイターの少女(メルケル)》
この作品が、世田美に出ていた。目黒区在住なのになぜ世田美かというと、龍水の方が世田谷区砧に住んでいたから。この時はまだ、氏の意図するところがわからなかったが、本展で再びみて気になり検索してみた。
氏の言葉「灰色の社会主義を批判した自由主義の旗手と、花の都パリの芸術に憧れた戦争経験者の祖父。新自由主義の限界があらゆる局面で指摘された2021年。やはりうまくまとまりませんが、なんとなくこの作品は2021年に完結した気がします。」
メルケルさんをモノクロで刺繍したのは、「カラーフィルムを忘れたのね」という、かつて東ドイツで流行した曲を退任式の演奏でリクエストしたからだという。この曲は、カラー=自由を失った東ドイツ住民がベルリンの壁を壊す原動力になった歌の一つだと、東ドイツ出身のメルケルさんが愛していたと、NHKの番組でみたことがある。黄色いセーターはウクライナのひまわりの色でもあるな、と結びつけてみる。
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4 資本主義、社会主義と労働問題(1)
氏が工業用ミシンで製作する理由の一つが、この道具が産業革命以前の手作業の職工から職を奪った、衣類類の大量生産のための道具であるためだという。ミシン刺繍により、資本主義、社会主義、労働問題をテーマに作品を作る。
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5 Every Art Marketーコロナ禍の「日常」と「非日常」
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コロナ禍で無理やり?開催した東京五輪への疑問や批判も
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第2会場へ
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6 資本主義、社会主義と労働問題(2)

入り口の壁にかかった言葉《The waste of labour power world come to and end》はウイリアムス・モリスの「労働力の浪費は終わりを迎えるであろう」という手書きの言葉を刺繍したもの。氏は、この制作に、2ヶ月のミシンによる単純労働と3000mの金糸を費やしたそうだが、「やりがいのある芸術的な仕事があれば、労働者は無駄な労働から解放される」というモリスの理念を検証したという。
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ヴィンテージプリントに、手刺繍されているところだけに工業ミシンで刺繍する。
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7 Map of the Worldー世界地図

美術は工芸より上位のもの、そして担い手は前者が男性中心、後者が女性中心で、なおかつ地球的規模で見ると、消費者欧米人とアジアの職工という、ヒエラルキーまで見えてくる。
この作品は、明るい状態では国境線がない白地図だが、暗くすると蓄光糸で縫った国境線と国名が浮かび上がり、「名もなき刺繍家たち」と「国家」の存在が浮かび上がる。
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8 アーティストたちの世界地図
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9 名もなき刺繍家へ捧ぐ

ジェラルミンケースに入った一万円札はもちろん氏が刺繍したもの。映像はそれを縫っている手元の動画。左はタイムカード。制作にかかった時間をタイムカードに正確に記録して、それに東京都の最低賃金を当てはめて算出した額。1万円札を生み出すのに59805円。作品の最低価格かな?
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津軽こぎん刺しが蓄光糸で縫われているので暗闇で浮かび上がる。麻布しか許されなかった津軽の農民が、防寒と布の強度対策のために編み出した刺繍が、伝統工芸と評される現代の不思議。
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そして、各国の刺繍をする労働者の写真に刺繍の部分だけにミシンをあてた作品が並ぶ。これらは、良き家庭人となる女性の嗜みとしての作業であったり、日常の生活用品に何らかの実用と彩りを添える作業であったり、先進国の需要のために安い労働力で地元伝統の刺繍を施す作業であったり。
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10 資本主義、社会主義と労働問題(3)
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11 資本主義、社会主義と労働問題(4)

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12 新作よりー「永遠なんてあるのでしょうか」消えゆくものたちへ

近年の制作テーマは、変化の激しい社会の中で「「消えゆくものたち」、例えば紙媒体のものはインターネットに変わり、キャッシュレス化も進む。
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本展のチラシやチケットも
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マクドナルドのレシート。拾った時日付を見たら2020年コロナ禍真っ最中のだったので作品にしたという。外食産業が打撃を受ける中、takeoutという形で生き残っていく。
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こちらは、ゴミ袋1枚5円を買っただけのレシート。有料化となって日本人のレジ袋削減率は8割を超えたが、レジ袋はプラごみ全体の2%と聞く。
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2時間4400円の駐車料金のレシート。恐ろしい土地の値段。
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また、吸い殻もまた消えつつある。以前はどこでも吸えた煙草が、今はごく限られた場所しか許されず、喫煙者自体も減っている。倒産した工場の中で見つけた吸い殻に、ものづくり大国日本を支えてきた工場や労働者も消えていくものの一つだろいうか、と氏は問う。
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コロナ禍で浮かび上がった日常と非日常、AIの目覚ましい発展で見直すニンゲン的なるもの、そういったものを取り上げる現代アートは多いような気がするが、資本主義・社会主義、労働、顕在化するヒエラルキーを提起した現代アートは今の時代却って新鮮な気がした。

6月9日まで


この後、目黒駅からバスに乗って白銀台駅へ。港区郷土歴史館の1室で開催のドールハウス展に最終日駆け込む。ドールハウス作家・戸塚恵子が作る懐かしの昭和風景。
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http://www.minato-rekishi.com/lectures/dollhouse.html
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合わせてみたコミュニケーションルームの昭和時代の電化製品そのものも面白かった。
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その中で、旧蜂須賀邸のステンドグラス。
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旧蜂須賀邸といえば、池上秀畝の板戸があったところだ。脳内で邸宅を再現(笑)

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1987201900&owner_id=2083345

アルバムあります。
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121171642&owner_id=2083345

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