mixiユーザー(id:2615005)

2016年12月20日22:54

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『デューン 砂の惑星』

昔のハヤカワ文庫を持っているのに、ちゃんと読んでいなかった。で、若いころ何より親しんだのはボードゲームだ。アトレイデス・ハルコンネン・フレーメン・ギルド・皇帝・ベネゲセリットの六陣営に分かれて覇権を競い合う。よくできたゲームで、夢中で遊んだものだ。裏切り者をあらかじめ書き留めておいて、戦闘のときに「裏切れ!」と指定するのが気持ちよかった。普通の四倍の裏切りをストックできるハルコンネンが強かったなあ。移動コストがかからないフレーメンもやりやすかった。すべての兵器を販売できる皇帝は、なぜか不買運動に会って貧乏になることが多かった。

で、やっと新訳版三冊を読みました。
・デューン 砂の惑星 上・中・下(65)作:フランク・ハーバード
不滅のオールタイム・ベスト1だそうだ。たしかに面白いのだが、途中まではそこまでのものか?という気がしてならなかった。砂に覆われた惑星アラキスに移封されたアトレイデス公爵は、ハルコンネン男爵と皇帝の陰謀で暗殺される。残された息子ポールと母は、フレーメンが支配する砂漠に落ち延びる。

陰謀や虚偽の多い話だが、すべての人物が親切にもカギカッコで話したあとマルカッコで心情を吐露してくれるので、わかりやすい。混乱せずにすむ。ある意味上質なジュビナイルのような味わいだ。
体内の水を逃がさずリサイクルする保水スーツとか、床に放置された濡れナプキンが使用人の利権になるとか、論理的な小技は嬉しい。物理攻撃にはシールドが、毒物には探知機があるが、さらにその裏をかく暗殺術があるーーという設定も緊迫感を高める。母親の出自はかなりショッキングだ。だが根本は、よくある中世ロマンスである。
ところが中巻から下巻に入ると、物語は真価を発揮する。異様な生態系の真相には驚かされた。魔女(超能力者?)集団ベネ・ゲセリットの超人製造プランは深謀遠慮の賜物で、普通なら「わはは、すべては我らの手のうちよ」となるところだが、当人は「おまえら考えが浅い」と一蹴する。
挙兵して皇帝・ハルコンネン連合軍に襲い掛かる展開は、興奮のあまり鼻血が出そうになった。終盤のアリアの活躍は、ロリ好きなら卒倒するだろう(いろんな意味で)。
戦略の立て方と事後処理も、納得のいく見事なものだった。うむ、確かに傑作だな。
最高点に値するとは思うが、本作は物語の面白さ7とSFの妙味3くらいの成分で出来ている。私ならやはりオールタイム1位には推さないだろう。★★★★★
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