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2024年05月23日14:38

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高峰秀子エッセイ二冊

高峰秀子のエッセイを二冊読んだ。

・高峰秀子ベスト・エッセイ 編:斎藤明美
高峰秀子は言うまでもなく日本映画を代表する女優だが、エッセイストとしても知られている。本書は養女の斎藤明美が選んだ精選エッセイ集だ。
内容の濃厚さに圧倒された。私は有名芸能人が書いた本はめったに読まない。ゴーストライターが書いたスカスカの本が多いから。本書は違う。文章が違う、品格が違う。本人にしか書けない貴重な証言がぎっしり。五歳で子役デビューしてから半世紀に渡って銀幕で活躍した強烈な人生の軌跡を堪能した。

養母と養父によって子役デビューさせられ、撮影が多忙過ぎて学校にほとんど行けなかったそうだ。彼女は1924年生まれで、終戦当時は21歳。戦前は児童福祉法もなかった。学校の先生がくれた本で独学して字を覚えた。養母の親戚が彼女の稼ぎを頼って集まり、ひどい有り様だったとか。戦前の日本は不幸話に事欠かないけど、こんな不幸もあるのか。菓子のプレゼントラッシュにうんざりし、甘いものが生涯嫌いになったとか。

「血染めのプロマイド」が素晴らしい。彼女のプロマイドは、日中戦争中に兵士への慰問袋によく使われた。血と泥に汚れた1枚が遺品として残されたエピソードは衝撃的である。中国人に対する誠実な感慨に、人柄が忍ばれる。
若い頃の修羅場に比べて、松山善三氏と結婚してからのおしどり振りは心がなごむ。老夫婦の穏やかな生活に心からお祝いを申し上げたい。★★★★★

・高峰秀子 暮しの流儀 著:高峰秀子/斎藤明美
養女の斎藤氏が在りし日のポートレートと共に思い出を語る。半分くらいは高峰秀子のエッセイから引用されている。日常がテーマなので深い内容ではないが、読み応えがある。高峰が遺した食器やアクセサリーのコレクションは、昭和の芸術家らしい味わいを感じる。
この人は家事が大好きだったらしい。「台所は女の聖域」なんて、今はまず聞かれない言葉だ。80年代ごろは「専業主婦なんて真っ平」という意見がよく聞かれた。でも、主婦業に代わる才能が何かあるかと言うと、何もない。昨今は不景気のせいでまた結婚願望が増えてるそうだが。もとキャリアウーマンの方々は、天下の大女優が家事大好きという事実をどう思われるかな。

夫がタクアン嫌いで、付き合って食べなくなったとか。妙に愉快なエピソードである。★★★★
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