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2016年04月21日18:10

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ジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」(4月20日、新国立劇場オペラパレス)

 主役の三人は水準以上の歌唱。マッダレーナ役のマリア・ホセ・シーリは第3幕「死んだ母を」を劇的に歌い、タイトルロールのカルロ・ヴェントレは数多いテノールの聴かせどころのポイントをはずさない。ジェラール役のヴィトリオ・ヴィッテリも「祖国の敵」を手堅く歌う。ヤデル・ビニャミーニも指揮者としてのキャリアは短いが、メリハリのある指揮で東京フィルをまとめあげる。
 
 全体的に不満のない公演だが、もうひとつ感激がうすい。その要因は歌手たちが迫真のリアリティを出し切れていないことにあるのかもしれない。
 アンドレア・シェニエの詩人としてのたぎる情熱、フランス革命により貴族生活はもとより肉親を失ったマッダレーナの絶望、貴族に対する憎しみ、マッダレーナへの情欲と理性の狭間で苦悶するジェラールの暗さなどが真実味を欠き、借り物であることが感じられてしまう。ヴェリズモ(写実主義)オペラの代表作である「アンドレア・シェニエ」であればこそ、もうすこし踏み込んだ歌唱や演技があってもいいのではないだろうか。
 
 2005年プレミエのこの舞台、演出・美術・照明はフィリップ・アルローで、ギロチンの刃が切り裂いたような舞台装置やギロチンの映像、音を使う。最後にシェニエとマッダレーナが断頭台に向かう時、目隠しをされた大勢の人々が後ろから現れ全員が一斉に倒れる演出は、フランス革命の犠牲者を表しているのだろう。(第1幕、第3幕の最後も血なまぐさい革命場面が暗示される。)その狙いはよくわかるが、クライマックスであるシェニエとマッダレーナの「愛」の描写がうすまる側面も持っていた。

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