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2016年01月04日07:47

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田村よしてるさんの歌

謹んで新年のご挨拶を申しあげます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
元旦、快晴の空に昇る初日を拝することができました。

昨年末、短歌人のお仲間の田村よしてるさんが急逝され、改めて諸行無常を思いつつ年を越しました。謹んでご冥福をお祈り申しあげます。

田村さんとは埼玉、東京、横浜の歌会でたびたびご一緒してきました。田村さんがそこにいるだけで、元気で楽しい雰囲気が漂うような方でした。昨年3月まで高校の教員をされていて(専門は化学、あるいは生物といった方面だったかと思います)、定年退職後、さあこれから第二の人生をエンジョイしようという日々が始まったところだったのであろうに…、と思うとまことに残念無念です。

昨年の12月23日の短歌人埼玉歌会の時に倒れ、救急搬送されました。当初の診断は軽い脳梗塞ということで、意識もはっきりしていましたので、要リハビリになるかも知れないが大事にはならないだろう、と皆で言い合ったのでした。が、心臓に持病があってその薬との兼ね合いで脳梗塞の治療がうまく進まないというような、思わざる事態が生じてしまったらしいです。

その埼玉歌会が始まる前の時間、「『アルゴン』読んだよ。おもしろかった!」と言ってくださったのが、彼からの最後の言葉になってしまいました。合掌。

最近の「印象に残った歌の記録」で、彼の歌を2回取り上げたことがありました。以下、その記事を再録し、田村さんを偲びたいと思います。

知らぬ間にからころぽろり赤玉が出でてしまひしわれかと思ふ   田村よしてる

…「短歌人」2014.12。一読、うふっと笑ってしまった。赤玉というのは、女性に閉経があるように男性にも閉精があるだろう、という件にかかわるアイテムである(「閉精」というのはただいま即興で作った語でありまして辞書には載っておりません)。はい、これにておしまい、というしるしとして赤玉が出るのだという。もちろんそんな玉は実在しないが、ある種のお話の中では実在する。田村さんは「知らぬ間に」と言いながら「からころぽろり」などといかにも実際に見たかのような言い方をしていて、可笑しい。次の歌は、《健やかな五軆に力満ち満ちて愛されるのはただ夢の中》。

段ボール箱に収まるありし日の教職員組合ニュースの熱気   田村よしてる

…「短歌人」2015.8。田村さんは今年[2015年]の3月まで埼玉県のある私立高校の教員だった。ちなみにかつての同僚に「短歌人」の編集人を長く務めた小池光さんがおり、今年一緒に定年退職したのは、同じく「短歌人」メンバーで現在は会務委員を務めている野村裕心さんであった。生徒を育てるとともに「短歌人」を育てたような高校だ。私立校だから人事異動というものがない。40年ぐらいずーっと同じ学校に勤務して定年を迎える、というひとも多いだろう。とすれば、教職員組合ニュースが熱気を帯びていた「ありし日」は、かなり昔のことだったのではないかと想像される。それもいまや段ボール箱の中に収まってしまっているが、やはり処分してしまう気持ちにはなれないのだろう。実によくわかって共感した歌だ。


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