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日記一覧

 ……久しぶりだな、この電車も。 椿は電車に揺られながら桃子と一緒に奈良へ向かっていた。そちらの方が利便がいいからだ。 途中大阪で乗り換えて一時間半程電車に揺らされていると、桃子は一人旅が寂しかったのかいつも以上に口数が多かった。 法隆寺の

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苔に覆われた美しい倒木や石。 森に生きる多種多様な生命の生活。 新しい小さな木々、太古の大きな木々の香り。 途切れることがなく流れ出る川の音。 森に存在する全ての有機物、無機物が一つの音楽を奏でているように脈を打ち、ここにいるんだと自ら

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 第四章 『睡蓮の灯り』  女刑事リリーが、花屋の店主・椿とその店員・桃子と大分の温泉に行く話です。  PART1(1/8) http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953792008&owner_id=64521149 リリーが椿の店に行き、彼を鍋に誘う話です。   PART

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  23.「こ、これは……」 リリーは目の前の風景を見て思わず息を呑んだ。「綺麗……」 雪が降り積もった真っ白な景色の中、睡蓮の花が淡い光を灯していた。「凄い……。このお風呂を亭主が入らないようにするため鑑賞用に変えたんですね」 温泉の中に

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  19. 次の日、リリーは頭痛で目が覚めた。どうやら酔っ払ったまま寝ていたらしい。慌てて鏡を見ると目が腫れている。 ……そうだった。 小さく溜息をつき、昨日の夜を思い出す。あれから桃子の自棄酒に付き合い、椿がすぐに潰れたため自分が付き合う

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  15.「あなたは短絡的な道に逃げただけです。一番楽な方法を選んだだけだ。あなたは戦わず現実から目を背けている」 女は上目遣いで雪花を睨んだ。眉が異常な程上がっており、瞳孔はこれ以上ないくらい開いている。彼女の息遣いがこちらに掛かるくらい

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