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2015年09月03日22:13

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マエストロ・オザワ80歳バースデー・コンサート レポート

マエストロ・オザワ80歳バースデー・コンサート(9月1日、キッセイ文化ホール)
 文字通り「世界のオザワ」を象徴するような豪華ゲストと、サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)を始め小澤征爾スイス・アカデミー、小澤国際室内楽アカデミー奥志賀、小澤征爾音楽塾オーケストラにOMF合唱団という総勢数百人にもなろうかという出演者たちが入れ替わり立ち替わりステージに登場する。クラシックだけではなく、マーカス・ロバーツ・トリオ、ジェームス・テイラーと彼のバンドも加わるというガラ・コンサートの極致とも言うべき絢爛豪華な祝祭イベントだった。

オーケストラから歌曲へ、弦楽合奏へ、そしてジャズのドラムセットやPAの用意へとステージ転換は大変で時間もかかるが、その間は世界各国からの著名アーティスト、オーケストラによるビデオメッセージがスクリーンに映し出され、観客を退屈させない工夫がなされていた。このビデオも本当にぜいたくなもので、ラトル&ベルリン・フィルがこのためだけに朝9時に集結、リハーサルのあと全員燕尾服礼服で小澤征爾のために1分間のストラヴィンスキー編曲のバースデーソングを演奏したり、ウィーン・フィル、ボストン交響楽団、タングルウッド祝祭合唱団によるハッピー・バースデーの演奏と合唱、ボストン・レッド・ソックスの上原浩治のメッセージなど、よくぞここまでという内容だった。

プログラムの著名人のメッセージは音楽界だけではなく、長嶋茂雄、王貞治などスポーツ界、吉永小百合、山田洋次など映画界、村上春樹まで、これもまた小澤征爾の人脈の凄さを示していたが、成城の行きつけの蕎麦屋「増田屋」のお姉さんのメッセージや築地の鮨屋さんからのメッセージもあり、ここにも小澤征爾の飾らない人柄が表れていた。
 コンサートは終始心温まる家庭的な雰囲気が保たれ、出演者たちに笑顔が絶えないのは小澤征爾という人間が持つ魅力によるものと言えそうだ。

前半はロバート・スパーノ指揮サイトウ・キネン・オーケストラによるバーンスタイン「キャンディード」序曲で開幕。続いて司会の有働由美子が進行を担当し、ジャン=ポール・フーシェクールによるプーランクの歌曲とリディア・トイシャーによるR.シュトラウス「子守歌」が披露された。(ピアノ:小林万里子)
ついで、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲を小澤征爾スイス・アカデミー、小澤国際室内楽アカデミー奥志賀、小澤征爾音楽塾オーケストラが弦楽合奏で演奏。小澤征爾は立ち上がってブラヴォを送り拍手をして若者たちを讃えていた。
バリトンのマティアス・ゲルネによるメンデルスゾーン「エリヤ」からの「主よ、足れり、わが命をとりたまえ」の深々とした歌唱(スパーノ指揮SKO)のあと、マーカス・ロバーツ・トリオによるビートが身体の奥深くから躍動してくるような「ビリー・ボーイ」「ベッシーズ・ブルース」、そして「ラプソディー・イン・ブルー」へと続いた。

後半は若手歌手たち、小澤征爾音楽塾オーケストラ、OMF合唱団、OMF児童合唱団をナタリー・シュトゥッツマンが指揮してラヴェル「子どもと魔法」の一部が演奏された。
サイトウ・キネン・オーケストラあるいは水戸室内管弦楽団の首席奏者たち(序列は常にフレキシブルだが)、豊嶋泰嗣、川本嘉子、ジャック・ズーン、フィリップ・トーンドゥル、ラデク・バボラークらによるシュポーアの九重奏曲も見もの聴きものだった。

小澤征爾はジェームス・テイラーとは彼の奥さんを通して親しくなったとのことだが、この偉大なシンガー・ソングライターの歌う「君の友だち」と「ファイア・アンド・レイン」は友人を思う歌。「君がつらいときはいつでも呼んでほしい。すぐに駆けつけるから」「つらい時もうれしい時もいつも君のことを思っている」という歌詞そのままの、小澤征爾を気遣う気持ちがこめられた温かな声は心に響いた。テイラーは奥さんと子どもを舞台に呼び、OMF合唱団とともに「愛の恵みを」を会場中の手拍子と共に歌い上げた。このステージではスティーブ・ガットのドラムスも光っていた。

コンサートの最後にマルタ・アルゲリッチが小澤征爾と手をつないで登場。腰の骨折後初の指揮となるため、大事をとって指揮台には椅子が用意された。アルゲリッチはベートーヴェンの「合唱幻想曲」をコンサートで弾いたことがあっただろうか。譜面を見ながらのピアノはすこしぎこちなかったが、打鍵の迫力はいつもながらのものがあった。この曲は20年前サントリーホールでの小澤征爾60歳バースデーコンサートでもピーター・ゼルキンが弾いた。あのときの演奏に較べるとオーケストラと合唱の迫力が数段増していたように感じた。小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラ、OMF合唱団三者の気迫は凄まじいの一言であり、それに加えてアルゲリッチ、そして豪華な独唱陣(ソプラノ:リディア・トイシャー&三宅理恵、アルト:ナタリー・シュトゥッツマン、テノール:福井敬&ジャン・ポール・フーシェクール、バリトン:マティアス・ゲルネ)が加わった火が噴くような演奏は会場のスタンディング・オベイションを呼んだ。小澤征爾はコーダでは立ち上がり足を踏み鳴らしての渾身の指揮だった。

すべてのプログラムが終わった後、あいさつも行った駐日アメリカ大使、キャロライン・ケネディー氏ほか出演者全員が舞台全体に広がり、長男の征悦、長女征良が運んできたバースデーケーキの火を小澤征爾が吹き消すと、アルゲリッチとサイトウ・キネン・オーケストラが「ハッピー・バースデー」の前奏を弾き始め、会場全体が大合唱で締めくくった。小澤征爾は涙で顔をくしゃくしゃにしていた。
外はあいにく小雨が降り始めていたが、甲冑の武士たちによる鉄砲が祝砲として披露され、また夜空には花火が上がり、小澤征爾の80歳の誕生日を祝った。
雨のため体育館に会場を移して、中高校生の大吹奏楽団に、サイトウ・キネン・オーケストラの金管も加わってチャイコフスキー「1812年」序曲も演奏された。小澤征爾は指揮をする若者の後ろで身体を揺らしたりリズムをとったり、ここでも元気な姿を見せていた。

映像:(c)毎日動画より
http://sp.mainichi.jp/movie/movie.html?id=896020492002


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