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2024年03月25日15:09

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3/22 ほとけの国の美術【前期】＠府中市美術館

恒例春の江戸絵画まつりも通い始めてもう何年になるだろう。10年以上なのは確か。「かわいい江戸絵画」でブレイクして「へそまがり」や「ふつうの系譜」など新鮮な切り口が楽しい展示は昨年は「おえかき」で、流石にもうネタは尽きたかと思ったが、今年はすごい！

仏教美術かと思わせておいて、それだけではないのは府中市美の真骨頂。仏教美術が花開いたのは平安・鎌倉時代。では「江戸絵画」に限定してはどうだろう？
鎖国政策の江戸時代、キリシタンは御禁制で、そのため誰もがいずれかの寺の檀家になるという「寺請制度」が作られた。信仰の深浅にかかわらず江戸の人々にとって仏教は暮らしの中に自然に浸透したものになったのだ。

「死んだ後どうなるのか？」は、時代を超えて永遠のテーマであるから、極楽地獄絵図は関心の的。「（極楽に行くためには）今をどう生きるか」も誰かに導いてほしい。そこで登場したのが禅をわかりやすく、親しみやすく教える僧侶による「禅画」。達磨さんや布袋さんは人気キャラにもなる。もちろん、僧侶でなくとも、強い信仰心を持った絵師もいたし、「古典」となった仏画の美しさに真摯に向き合う絵師もいた。「動物にも人と同じ心がある」という仏の教えが、応挙や蘆雪のかわいい子犬の絵を生んだ。さまざまな絵画スタイルが生まれた時代だからこそ仏教をテーマに、ほとけの教えを根底に、自由な作品が生まれたのだ。

しかし、これだけだったら、既出の絵画展示で回せそうでしょ。
今回すごいのは、修復したばかりの京都・二尊院の土佐行広筆《二十五菩薩来迎図》17幅を襖ごとお借りして展示。これについては、詳しく後述したい。
他にもちょっと珍しい仏画や、一見仏教とは関係ないと思われるものもあって飽きさせない。最後には、新発見・初公開の長沢蘆雪筆《子犬図屏風》も。ゆるかわの子犬図はいくつも掛け軸になっているがやすり霞の美しい屏風仕立ては初めて見る。よっぽど犬好きが注文したのだろう。

気づけば３時間弱。この日は夜お店を予約していたので早めに帰らねばならない。
手作りコーナーの『ポケットご本尊を作りましょう』と『ほとけの国のぬりえ』は、ポケット御本尊だけ作り、コレクション展は後期じっくり見ることにして「通って」おいた。【色彩のイマージュ】という括りで、面白そう。

府中の森公園の桜は、カンザクラが散り始めているのを除いてまだ硬い蕾。寒かったので桜ソフトクリームの定点観測もせず。

写真撮影は不可。平日のためか、いつも通りストレスなく観覧できた。

https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/Art_in_the_Land_of_Buddha.html

「ほとけの国の美術」という言葉から、皆さんなら、どんな美術を思い浮かべますか？天平時代の優美な仏像、平安時代の洗練された仏画、あるいは、鎌倉時代に運慶が作った端正で力強い仏像でしょうか？もちろん、どれもが素晴らしい「仏教美術」です。しかし、この展覧会でご覧いただく「ほとけの国の美術」は、それらとはちょっと違います。
例えば、江戸時代の画家、伊藤若冲が描いたユニークな白象の絵も、円山応挙や長沢蘆雪の無邪気でかわいい子犬も、仏教がなければ生まれなかった美術なのです。
江戸時代の絵画というと、現代ではそれぞれの画家の「個性」に目が向けられがちですが、当時の画家や絵を見る人たちの多くは、仏教と密接な暮らしをしていました。今回の展覧会では、画家たちの制作の根底にあった「仏教」をキーワードに、現代人の心を魅了する様々な作品を見渡します。
展示作品の中心は江戸時代の絵画ですが、昨年修理を終えたばかりの室町時代の仏画の大作、京都市・二尊院の《二十五菩薩来迎図(らいごうず)》全17幅のほか、近世以前の仏教美術の優品も展示します。来迎図から若冲、そして応挙や蘆雪の子犬まで、「ほとけの国」で生まれた、美しく、アイディアに溢れた作品をお楽しみください。

第一章　浄土と地獄

《阿弥陀二十五菩薩来迎図》福島県立博物館
鎌倉仏画らしい繊細な装飾が美しい。傷んでいるので、やや見づらかったが、下の方に描かれているのは下界のとある邸宅。まさに臨終を迎えようとしている人の枕元には阿弥陀来迎図の掛け軸がかけられ、手を合わせている。庭の花木は美しく咲き乱れ、上空から金色に輝く阿弥陀二十五菩薩が迎えにきている。死は決して怖いものではない、と思わせてくれる。

土佐行広《二十五菩薩来迎図》京都市・二尊院
普通《阿弥陀二十五菩薩来迎図》は、一画面に全て描き込まれているが、こちらは17幅の掛け軸になっていて、珍しい。
日輪・月輪のほか、25の菩薩が2体あるいは1体ずつ描かれているが、17幅の中には迎えに来る阿弥陀如来と極楽で待つ釈迦如来のお姿はない。二尊院では、その2体だけが塑像で、来迎図の中央に置かれているという。（展示では写真パネルで再現）

菩薩はそれぞれ楽器を演奏しているが、截金の施された衣、鮮やかな彩色の瓔珞は精緻で美しい。
さらには、そのバックは美術館の壁でなく二尊院の襖を持ってきている。右は紅葉が描かれた秋の景色、左は雪景。人々は現実風景の中に仏様が現れることをこれで実感できるのだろう。ニクイ展示配慮だ。

狩野了承《二十六夜待図》
旧暦の１月と７月の２６日の夜に、月の出るのを待って拝む行事。この日の夜半すぎに出る月は、出る間際の光が三つに分かれ、瞬時にまた一つになるように見え、その光の中に阿弥陀三尊の姿が見えるといわれ、これを拝むと幸運が得られるという信仰が古くからあったという。確か浮世絵にもあったと思うが、これは幻想的で不思議な絵画だ。

《柳橋水車図屏風》京都国立博物館
仏画ではないが、浄土のイメージから生まれた作品ではないか、と府中市美。同じ絵が２０点以上あるのもそういうことかな。

《十王図》は江戸時代に多く描かれた。展示のものは、大津絵に似て、朱色の絵具が目立ち、さばきの怖さが伝わる。

第二章　禅が教えてくれること
江戸時代は禅宗が最も普及した時代で、「禅画」も数多く描かれたという。

甫雪等禅《叭々鳥図》（画像は部分）
叭々鳥は日本に生息しないが、中国では吉祥の鳥とされている。でも、何やら不遜な顔つきが面白い。

狩野山雪《松に小禽・梟図》摘水軒記念文化振興財団（府中市美術館寄託）
とぼけた梟に、小鳥が２羽イチャモンをつけているよう。「世間で言うように、梟は本当に悪い鳥なのか？」と問いかける。

白隠慧鶴《拝牛図》
ヘンテコ禅画といえば、仙厓か白隠か。悟りを得るまでの10段階を描いた「十牛図」に準えている。

第三章　古典美としての仏画
仏画とは、奉って礼拝するための尊像の絵のことであるから、完成された美に江戸時代の絵師たちの心をも捉えたのだろう。

鈴木其一《毘沙門天蔵》個人蔵（京都国立博物館寄託）画像は部分
墨とわずかな金を用いて、正面からきっちりと描いている。揺るぎない線描に威厳を感じる。

鈴木其一《荼枳尼天（だきにてん）像》
こちらも正面からきっちり、装飾的に。鳥獣を正面から描くとそれだけで面白いが、白狐が前足で矢を持つポーズが不思議な魅力だ。

菊池容斎《釈迦三尊・十六羅漢・十大弟子像》墨田区・回向院
菊池容斎というと後世に大きか影響を与えた歴史画家というイメージであったが、美しい仏画だ。

第四章　ほとけの国の人気キャラ
キャラクター作りは江戸時代ならではの文化。
豊干禅師や寒山拾得は、ヘンテコか不気味な絵が多い。
えてして白衣観音は色っぽく、椿椿山の《白衣観音図》は美しかった。

伊藤若冲《石峰寺図》京都国立博物館
石峰寺は若冲の菩提寺。実際五百羅漢像を作ったが、絵にもしている。ここで、マイミクさんから前もっての情報：絵の中には、若冲本人とその弟も描かれいている、とのこと。急遽「若冲を探せ！」羅漢さんに混じって、普賢・文殊の菩薩さんはすぐに発見。若冲は仏ではないから、足のある人…右下に大八車を洗う人発見。生家は青物問屋だからね。中央のあたりで、うなだれて座っている人も足があるよ。謎解きが面白い作品。

逸見一信《降龍伏虎羅漢》画像なし
逸見（狩野）一信は、増上寺の五百羅漢で有名。龍に乗る羅漢と虎の頭を抑えてねじ伏せる羅漢の二幅対。羅漢さんは人気。

白隠慧鶴《すたすた坊主》
乞食同様の格好をして飄々と隠遁生活をする坊さんは尊敬もされる？が親しみやすい人気キャラ。

春叢紹珠《皿回し布袋図》
お腹がでてて、大きな袋を担いでニコニコしているから、布袋さんもかなりいじられキャラ。

奈良の大仏はその大きさで大人気、どれだけ大きいかを絵で示す絵師もいる。大日如来の化身・お竹さんの話も江戸時代には流行、浮世絵に登場。

第五章　円空の仏像
荒削りで野生味があり、顔は満面の笑顔の円空と木喰の像もまた信仰が生んだ形。思い出すのは東京ステーションギャラリーで見た、みちのくの仏たち。専門の仏師でない人たちが作った素朴な形もまた美。

第六章　涅槃図と動物絵画の時代
木版のものを描き写したと言われる小さな《仏涅槃図》、釈迦の涅槃を嘆き悲しむ弟子たちに混じって下方にはいろんな動物もまた悲しんでいる。私たちには当たり前に思えるが、西洋画ではキリスト受難を嘆く動物たちは描かれないよね。「人も動物も同じように心を持つ」という考え方が仏教にはあるのだ。

長沢蘆雪《藤花鼬図》のイタチの愛らしいこと、円山応挙の《雪渓双熊図》では親子熊の愛情に感動。森徹山は、吉祥とかと何の関係もない狸の絵を（ただ好きだから？）描くし、
岸勝《猿の坐禅図》摘水軒記念文化振興財団（府中市美術館寄託）は、猿も人と同様に悟りを開こうと努力する。瞑想する表情のかわいさ。