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2023年12月04日21:12

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不定期不連続物語「蟲五郎幻行録」その520

【奥歯】
「で?奥歯に何か挟まってるって?」。
土竜のような顔付きの歯科医が、蟲五郎に問いかける。
「どれどれ?僕が取ってあげませう」。
とピンセットでつまみ出したのは、米倉斉加年が秀逸極まる表紙絵を担当したコトで有名な、角川文庫版「ドグラマグラ(上)」だった。
どうしたわけか、オクラのようなネバネバに全体が覆われている。
それを取り除けて表紙をめくると、毒蛾の鱗粉が辺りに飛び散った。
コブラのような顔つきの歯科助手が、「きいっ!」と叫んで飛び上がった。
気を利かせた三郎太が、昆布茶の湯呑みを三つ、丸盆に乗せて運んできた。
続いて茶請けとして、ホイップクリイム添え小倉あんどら焼きも持ってくる。
「僕は緑茶しか飲まんのよ」。
歯科医のそのひと言で、一瞬にしてその場がお通夜のような雰囲気になった。
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