五社英雄監督の時代劇はこれが最後だ。
『丹下左膳 飛燕居合斬り』(66)
丹下左膳が右目と右腕を失う過去が描かれていて、武家社会自体に反発する動機が良くわかる。
凄惨な過去ではあるが、本人に暗い影を感じないのがいい。中村錦之助の演技力のおかげか、暗くて当然の話が妙に明るく感じられる。
色っぽい常磐津師匠(淡路恵子)と清純な武家女(入江若菜)のダブルヒロインが魅力的だ。こけ猿の壺を巡って凄惨な死闘が展開する。殺陣はさすがに見応えがある。ちょっと気になるのは右手のない左膳が普通通り左腰に刀を差していること。だから抜くときは逆手になってしまう。手の中で持ちかえるか、鞘ごと抜いて口で咥えてからズズッと抜く。咥え抜きは異様さが際立つけど、どう考えても動作が遅れるだろう。まあハンデをものともしないほど強いということか。
ラストの大立ち回りは痛快至極。一体どうやって決着させるのかと思ったら、あっさり丸く収まる。リアル残酷映画もいいが、こういう明朗活劇もいい。★★★★
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