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2023年03月11日03:36

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この“国定忠治異聞物語”は、黒澤明の時代劇へのアンサーではなかろうか? マキノ雅弘監督「八州遊侠伝 男の盃」(1963)。

1963年6月30日公開ということですが、この日は日曜日ですね。日曜初日ということもあったわけだ。東映では河野寿一監督の「右門捕物帖 蛇の目傘の女」と2本立てだったようです。しかし22日に石井輝男監督「親分(ボス)を倒せ」と小沢茂弘監督「用心棒市場」を封切った8日後の日曜日ですね。←この2本立ては普通に土曜初日ですが。

物語は題名のとおり、上州が舞台です。夏祭りに向けて町が盛り上がろうとしているのですが、このあたりを一手に取り仕切ろうとする黒岩の松五郎(原健策)という親分が、力づくで祭りの利権を横取りしようとします。この地を預かる目明しの藤兵衛(志村喬)が筋を通そうとするのですが、老いた目明しの藤兵衛なんかハナから相手にしていません。

そこへ流れ者“けんか独楽の源次”(片岡千恵蔵)がやってきて、という筋書きでした。藤兵衛の息子佐太郎を千葉真一が演じていて、その恋人娘お千代役で藤純子がデビューしています。脚本は直居欽哉と山崎大助によるオリジナルらしい。

目明しの藤兵衛が“60歳の老人”というのは納得いきますが(当時志村喬58歳)、けんか独楽の源次を演じる片岡千恵蔵こそ60歳ですよ。それなのに実は〇〇で△△の✕✕だなんて、これが吹き出さずにおれましょうか?←しかし町のセットがなかなか立派で、リキが入っているんですよ。使いまわしにしても豪華でした。

でもって、祭りに備えてテキヤたちが集まっていて、田中春男あたりは関西弁を披露しています。そしてそして、店を出そうという連中たちの側にも先生と呼ばれる用心棒がいるのですが、それが松五郎一家に強そうな先生がいると知ると、“昼逃げ”を決め込むのでした。ここで僕にはピンときましたね。これが「用心棒」で藤田進が演じた先生だ、とね。

そして国定忠治はお役人に捕まって獄門となっていたという話が伝わるのですが、実は〇〇で△△の✕✕なんですよ。でもって、腕っぷしはたいしたことないくせに太鼓だけは叩ける藤兵衛の息子佐太郎が、黒岩の松五郎と父親を取引させようとする訳です。そうして実は〇〇で△△の✕✕だという展開になる。

終盤、けんか独楽の源次が潜んでいるお堂が、僕には「椿三十郎」で若侍たちが談合するお堂と重なり、この映画そのものが「用心棒」「椿三十郎」と連続ヒットして東映時代劇を葬り去ったリアル時代劇に対する、オマージュというか追随と言うかパチモンというか、ある意味のパロディーだと思えたのでした。

それにしても、年の近い俳優を親子に配役する映画は数々ありますが、年下の男を父親に配役するという映画は、ついぞ見たことがありません。しかしここは、「生きる」の志村喬(東宝専属)を起用して黒澤映画をほのめかしておかないと、映画そのものの存在がぶち壊しになると考えたのではないでしょうか。

いやはや公開当時に東映時代劇なんか見る気もなかった僕ですが、もしこの作品を見ていたら、「続・荒野の用心棒」あたりにベトナム戦争を貼り付けたりして小川徹さんの裏目読みを気取るよりも、堂々と正面から(?)黒澤映画を論じていたかもしれませんね。しかし、そうしなくて幸いだったかも(苦笑)。

念のため申し添えますと、「十三人の刺客」が公開されるのが1963年12月でした。東映時代劇の迷走期間に作られたこの映画は、やはり黒澤時代劇へのアンサーのひとつと考えるのがいいような気がします。
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