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2022年04月25日08:05

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新約・三日月銀のペンダント 19

ペジタに着くと相変わらず、活気ある街が広がっていた。
「ここが、ペジタなの……凄い!!!」
紗雪は初めて見る、大都会に目をキラキラしていた。
少し暴走して活気あるバザーに飛び込んでいた。
ああああ……。絶対迷子になる。
街に入って直ぐに『零式』を渡していて良かった。
わたしは渋々に『零式』起動する。位置情報サービスで紗雪を探す。
場所はバザーの最深部にいた。
そこは金と塩を売る場所である。何故、金と塩なのかと言うと。
ペジタの南にある海の貿易の入口、サンザキ港からしか手に入らない。
その影響でペジタは塩の慢性的な不足となっているので、値段以上に貴重品である。
なので金の売買を行う場所の隣にあるのだ。
仕方がない迎えに行くか。わたしはバザーの中を歩いて行くと……。
交差点に香辛料のスペースがある。その売り場に近づくと独特の臭いがした。そう、世界中から集まった香辛料である。
観光客向けの少量でも売っている。買うか考え込んでいると。
「いかん、いかん、紗雪を探さねば」
香辛料の香りで寄り道は無しだ。先に進もう。
バザーの最深部に着くと、紗雪は何故か塩の店主とアームレスリングをしていた。
どうやら、賭けをしたらしい。
紗雪が勝てば、塩を金貨一枚分、店主が勝てば金貨一枚を無条件で支払う。
屈強な店主と比べて紗雪は余りにも体格差がある。
しかし、紗雪は血族である。目の色が漆黒から青白くなると。
劣勢が逆転する。店主が紗雪の目に気がつくと一気に勝敗がつく。
「お嬢ちゃん、血族なのはルール違反だよ」
ここはわたしが納めねば。
「店主よ、少女の戯言だ、賞金の塩は要らない」
わたしが二人の間に入って店主にわびる。
経緯は分からないが、紗雪はまだ自称12歳だ、ここは素直に詫びよう
「えぇー塩、貰えないの?」
「当たり前だ、金貨一枚分の塩など旅人の身分でどうしろと言うのだ」
「ケチ……」
「まぁ、そう言うな、バザーの入口にアイスクリーム屋があった。そこで、甘い物でも食べて機嫌を直せ」
バザーの入口まで戻ると、アイスクリームを買う。
「うわー、このアイスクリームなる物は、なに、なに」
北の氷目の里にはない食べ物らしい。
牛乳が無かったのだ、アイスクリームもなくても不思議ではない。
近くの公園のベンチに座って、食べ始める。
「美味しいな」
「うん」
紗雪との会話は停滞して言葉は減っていく。
美味しい物を食べていると、不思議と無口になるのであった。


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