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2021年12月30日10:56

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義足のボーイ・ミーツ・ガール 72

黒猫のリーダーが日向で寝ている。
季節は小春日和の代名詞が似合うのであった。
あー紫陽花の季節が恋しい。
わたしはこの季節苦手だ。
リハビリの記憶がよぎるからだ。義足でようやく歩けるまで頑張った記憶がある。
イヤ、この季節が苦手なのは昔からだ。
わたしは斜めに傾いた日差しを受けて目をつぶる。
黒猫のリーダーが寄ってくる。
日差しの中からは何も見えなかった。
「リーダー、ご飯にしよう」
わたしはリーダーにカリカリのエサを与える。 
この日常はさおりんが居なくても成り立つ。
「さおりんが居なくなったら、リーダー、お前だけだ」
しかし、リーダーは食べ終わると庭の奥へと消えて行く。
独りか……。
わたしは孤独慣れはしているが、この想いは何処に行くのかとセンチメンタルになる。
おっと、学校に行く時間だ。
わたしは自室に戻り制服に着替える。
気がつくと携帯にさおりんからのメッセージが届いている。
『教室まで競走だよ』
わたしは携帯を操作して、一枚だけあるさおりんの横顔を見ると心が微笑む。
さて、出発だ。自室を出ると玄関に向かう。
気がつくと先程庭に消えた黒猫のリーダーが待っている。
「ゴロゴロ」
わたしはリーダーの頭を撫でていると。
そうだ、さおりんと教室にどちらが速く着くか競走中であった。
重い左足を感じながら歩き出す。

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