つぐみは自習スペースから出られるベランダにいた。
「わたし迷っていたけど言うわ、撫子さんにまたナデナデして欲しいけどダメかな?」
ナデナデか……つぐみは飼猫のように物欲しげな姿でこちらを見ている。
何が最善の選択だ?このまま、つぐみから逃げるか?
長考の末に、やれやれ、わたしにはナデナデの道しか無いらしい。
わたしはつぐみに近づくと手を伸ばす。
独特の髪の感触を味わいながら頭をナデナデする。
こんな現実でいいのか?と深く考えながら手を動かす。
「撫子さんのナデナデは最高だよ」
つぐみは笑顔で寄り添ってくる。
何時からだろう?つぐみの居る生活は?
簡単な計算ができないでいると。
正美がやって来る。
「幸せそうね、わたしにもナデナデしてくれるわね」
見られていたか、わたしは本能的に危険を察知してつぐみから離れる。
「何の事かな?」
ここは白を切る事にした。
「わたしにはナデナデしてくれないのね」
「あぁ、しない」
「なら、わたしがムニューっとするわ」
正美はわたしの背後に回り両手でムニューっとしてくる。
苦しいかと思えばそうではない。
愛に飢えているわたしの心をギュッと掴むものであった。
正美がわたしから離れて勝ち誇っている。
わたしはいったい何をされたのだ???
心が正美に彩られていく。
つぐみはそんなわたしを見てまた何処かに去っていく。
振りだしか……。
しかし、本当にわたしは友情に飢えている。
正美のムニューっとにこんなにもいとしくなるとは。
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