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2020年01月02日19:42

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本棚238『石垣りん詩集』伊藤比呂美編(岩波文庫)

 石垣りんは、家族を支えるために14 歳から大手町にある銀行で働きはじめ定年まで勤め上げた。そのため、詩にも仕事と家庭を描いたものが多い。月給袋を持ち帰るために、「一日のうち最も良い部分、生きのいい時間」を会社に売り渡す日々、貧窮する生活や家族への愛憎や葛藤などが赤裸々に綴られる。花鳥風月の美しさを詠み上げるような詩とは対極にあるが、人間や社会を見据える凛とした言葉は胸を打つ。印象的な作品は多々あるが、圧倒されたのは「くらし」という詩。その何気ない題名とは異なり、慟哭のような激しさに満ちた詩で、最後の二行に人間の根源的な業や哀しみが感じられる。
「四十の日暮れ 私の目にはじめてあふれる獣の涙」
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