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2019年11月09日03:59

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全米公開版より7分短い理由は不明だが、なかなかの娯楽映画でした。スパイク・リー監督「ブラック・クランズマン」(2018)。

スパイク・リーが共同脚本として参加し、アカデミーオリジナル脚本賞を受賞した作品です。リーとしては初のオスカーを手にしたと話題になりました。劇場では見なかったのでDVDで鑑賞。そしたら上映時間が2時間8分でした。アメリカ版は2時間15分とimdbにあるけど、どうなってるんでしょ?←ヨーロッパ仕様のPALに変換した素材をNTSCにした? それでも1分以上足らんで。

それはともかく、ストレートに楽しめる刑事劇でした。コミカルな部分もあり、だからこそ見ていられるわけです。とはいえ、ラストに2017年にシャーロッツビルで起こった、黒人デモ隊に乗用車が突入するシーンが挿入されていて、この映画の笑いの部分はフェイクだよと教えてくれます。

黒人の潜入捜査官がKKK団に潜入する、というのはもちろん無理ですから、潜入するのは白人警官(しかしKKKの標的であることは同じ)です。黒人警官は電話でKKKとやりとりします。そんな無茶な、というあたりをすんなり見せてしまうから、よく出来た娯楽映画なのです。スパイク・リーが商業監督としての手腕を見せたしだい。

何がよくできているかというと、スコープサイズの画面がとても豪華に感じられたのです。つまり冒頭に「風と共に去りぬ」の負傷兵たちがずらりと並んでいる有名な場面が引用され、さらに劇中、D・W・グリフィスの「國民の創生」が引用されます。この映画史に残る大作(いい映画とは言いません)の映像に対して、街を走る乗用車の車列など、一歩もひけを取っていない。それが僕には楽しかった。

撮影監督はチェイス・アーヴィンというカナダディアン・アメリカンだそうです。「ともしび」(2017)を担当しているのか。未見ですわ。先述したように、ニュース映像が挿入されますが、それ以外はすべてフィルム撮影のようです。←さすがにフィルム代を倹約するためか、スーパー16を使ったり、35ミリの場合は3パーフォレーションで1コマという手法をとっているようですが。

要するに、どのような手法を取るかの問題ではなく、出来上がった映画に格調があるという部分が大事なのです。それがないと、どんなに立派な内容を述べようとしていても、僕のようなわがままな観客の心には響きません。そんなやつらは蹴散らしてしまえ、という主張もあり、それが世界の趨勢かもしれません。でも作品はそれじゃ成立しない。いや、仲間内だけの映画で終わってしまう。今回のスパイク・リーは、そうじゃないわけです。

この「ブラック・クランズマン」の興行収入は8900万ドルだそうで、スパイク・リー監督作としては、「インサイド・マン」に次ぐヒットだとか。とはいえ1億ドルに満たない作品は、大ヒットとは言えないと思います。僕でさえ、過激なブラック・パワーのメッセージ映画かと思っていたわけで、スパイク・リーが商業監督としてどこまで認められるのかは不透明です。また、それを本人も僕もそれを望んではいない。

とはいえ、やはりゴージャスな映像で語るこの映画は見ごたえがありました。冒頭に、トランプ大統領のそっくりさん俳優が教授役で登場し、ごたくを並べる場面も面白い。それが全編の基調です。だから笑って見ていればいい。でも「ジョジョ・ラビット」同様、笑いで済まされない現実を、見た人間がどう対処していくかという問題が残ります。その解決法は映画が教えるものではなく、自分で対処するしかありません。というか、ボーっと生きてるだけでも大変な世の中ではありますが。
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