mixiユーザー(id:6327611)

2019年11月08日05:45

203 view

珠玉の家族映画という言葉は、この映画にこそふさわしい。タイカ・ワイティティ監督「ジョジョ・ラビット」(2019)。

来年の1月17日公開だそうですから、ぜひお楽しみに。ということでネタバレ少なく書くつもりです。物語は、ヒトラー・ユーゲントに所属し空想のアドルフ(タイカ・ワイティティ監督が演じています)と会話している10歳の少年ジョジョ(ヨハネスの愛称、演じるのはローマン・グリフィン・デイビス)が、優秀なナチ党員になろうとしていたのですがかなわず、そんなときに自宅の隠し部屋にユダヤ人少女を発見する、という展開です。

テレビの情報番組で眼にしたような気がしていましたが、僕には“お子様ランチ”映画に思えて、試写状をもらったときにはパスしようかと考えました。しかし監督が「シェアハウス・ウィズ・バンパイア」のタイカ・ワイティティだと分かり、これは何を置いても駆けつけなくてはと、初回試写に駆けつけたしだいです。なんでも、アメリカでの本格公開は今日(11月8日)らしい。←これまでは映画祭と限定公開のみ。

宣伝文句の“本年手度アカデミー賞最有力!”という惹句には、ずいぶん昔から辟易としています。こう打ち出して、いざアカデミー賞には候補にすらならなかった映画のいかに多いことか。そしてたいてい、アカデミー賞前に公開する訳です(ノミネート前ね)。いい映画だけど、それ以外の売りが少ないと白状しているようなもの。

しかし今回は、僕に対してはツボがいくつかありました。まず冒頭、ドイツが舞台でヒトラー青年隊の話なので、聴きなじんだ曲がドイツ語の歌詞で流れます。それがビートルズの“抱きしめたい”。今の若者はビートルズにポール・マッカートニーが所属していたことすら知らないようですが(TV番組「カセットテープ・ミュージック」のうめちゃん参照)、ヒトラー時代にドイツ人がカバーしていたなんて思わないでね。本物のビートルズですからね。

という冒頭で、“この映画はタランティーノ同様のフィクションですからね”と断ってくれます。そして少年の母親を演じるのがスカーレット・ジョハンソンで、少年たちをしごくキャプテン・Kがサム・ロックウェル。さらにKの部下にトンデモ女史のレベル・ウィルソンがいます。この顔ぶれでこの展開、この通好みの作品にオスカーなんかダメダメのダメです(笑)。

息子が手榴弾訓練で大けがをしたと知り、キャプテンKに“怒鳴りこむ”よき母親の姿が最高でした。世の母親はかくあるべきという理想的な母親です。怒鳴りこむと書いたけど、何も言わずにけり倒すところが最高。この爽快感は「シェーン」でアラン・ラッドがウィルデ少年に早射ちを披露する場面に匹敵します。

とはいえ永遠の13歳の僕は知っています。ナチス時代にかくまわれていたユダヤ人たちの末路を。そして連合軍の激しい攻勢に遭い、息も絶え絶えに暮らしていたドイツ市民の苦しい生活を。この映画は“実際にはあり得ないファンタジー”ですから(だからビートルズを巻頭にぶちかましたわけです)、現実の悲惨な生活は描かれません。だからといってラストで、めでたしめでたしと喜ぶおめでたい観客は数少ないはず。

ということで、ビートルズなんか知らない世代が多数を占める今日、ヒトラーなんか知らないよという青年(というたとえの原点を知らない映画ファンも数多い)ばかりでしょう。にもかかわらず、民族を語り愛国心を語るバカ者(あ、誤植、若者です)のなんと多いことよ。ぜひ家族全員でこの映画を見て、膝を突き合わせて語り合ってください。この映画の真意をきちんと受け取れない輩は、チコちゃんに叱られて来い!ということです。

ということで、タイカ・ワイティティの「ハント・ザ・ワイルダー・ピープル」を再見したくなりました(配信しているみたい)。ワイティティ監督は“健全なる家族映画”へとシフトしているように感じます。ということは「マイティソー バトルロイヤル」も機会があれば見てやるか。せいぜい稼いで、作りたい映画を作れる立場を確立してください。母親スカジョが教えたように“出来ることをやる”のが我々大人の務めなのですから。
3 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年11月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930