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2019年08月26日20:44

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ヴィーナス&女神ツアー50 日本神話の刻まれた土器

井戸尻考古館の展示ケースの壁に
『みづち』のタイトルの付いた案内パネルが掲示されていた。

「何か正体のしれない、一対の怪異な水生動物。この種の動物文がつく土器は総じて単純な器形で。これの居る下半部は土器を作った時の輪積み痕が残されている。それがいかにも水界らしい雰囲気をかもす。
 山椒魚とか魚類、または龍の属とと見られる。ともかく、そうした要素が混合した想像的な水生動物には違いないので、古語で〈みづち〉と称するのが似合う。
 いっぽう、土器の上半は画然と異なる。大抵は縄文地、または素文で、凹んだ眼すなわち眼窩(がんか)が印されたりしている。したがってそこは日月の宿るべきところ、天の領域であることが知られる。
 そして境界の直下には、動物の背に連なって楕円形の模様が置かれることが多い。
 この種の土器図像は、天地の始まりや洪水の神話に由来すると考えられる。
 西南中国の少数民族に伝えられる創世神話では、巨大な魚や亀が大地を支えているという。古代中国の神話伝説の〓(こん:金編に系)は息壌(いきづくつち)という増殖する土くれを天帝のもとから盗み、子の禹(う)はそれを用いて洪水を治める.その鯀、禹の原像は水生動物だと目されている。大地の素(もと)となる土くれが原初の海底からもたらされるという神話は、太平洋沿岸に広く分布する。
 楕円形の文様は、そのような生まれたばかりの稚(わか)い大地を表したものだろう。
 この種の動物文は、頭の表現が必ずしも明確ではなく、中には環状文や蛙文系の肢趾、三本指などの混合した例が少なくない。この時代の太陰的な世界観に置いて、水は月に属している。それゆえ、原初の海ないし水界の主もまた月の動物だと観念されていたに違いない。」

「みづち」と思われる文が浮き彫りされた縄文土器の一つが下記の
藤内14号趾から出土した有孔鍔付壷だ。

フォト

小孔が鍔の上に等間隔に並んだ土器だが、
その小穴にはヤマドリの羽が挿されて装飾されたものとみられるが
上記有孔土器再現例の写真は『井戸尻 第9集』掲載の写真で、
ネイティブ・アメリカンの土器のようだが、
上記縄文土器と壺の形態がほとんど同一なことに驚かされる。
その胴部には三日月状の頭を持った
「何か正体のしれない、怪異な水生動物」が浮き彫りされている。
この三日月はこれから満月に向かう三日月ということになるのだろう。

もう一つのみづち文が浮き彫りされた井戸尻考古館九兵衛尾根出土の
筒形土器は口縁部と胴部を水平に別ける波形が入っており、
波形の下部を「海」とみるなら、波形の上部に位置する楕円は
『みづち』の案内書にあるように「生まれたばかりの稚い大地」、
円は「生まれたばかりの稚い空」ということになり、
洪水神話、あるいは日本神話を描いた器ということになる(写真左)。
(写真左)正面はみづちの尾の部分だが、尾には分岐があり、
ペーズリー文にもみえる。
素材が磁器なら、
装飾は現代のジョッキにしかみえないモダンなデザインだ。

もう一つのみづち文を持つ曽利80号址出土の月牙文浅鉢は
みづちの尾が器の内面口縁部に入り込んでいる斬新なデザインだ。

フォト

向こう向きなので、外面の文がどうなっているのか誰しも知りたいだろう。
鏡を使用した展示か、写真表示の必要のある土器だ。

みづちの一種と思われる「正体のしれない、怪異な水生動物」が
口縁部に装飾された深鉢が曽利32号址から出土している(写真中)。
この水生動物は双環突起を持ち、
1本の長い胴が絡んで、口縁部に装飾されているように見える。
双環突起の上部の口縁には有機的な形状の穴、
キャタピラーのような楕円形、
ブーメラン形状のものが浮き彫りされている。

他にも、ナマコのような形状の文が浮き彫りされ、
それが口縁を押し上げているでデザインの深鉢が
籠畑10号址から出土している(写真右)。
縄文人にとってはナマコも、みづちの一種と見られたことだろう。
ニットのような網目で表現されているのは籠畑遺跡特有の造形であり、
それは次の日記で紹介するが、
ニット風網目がナマコの突起のある表面に合うからこそ、
ナマコがモチーフにされた土器なのかもしれない。
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