不定期不連続物語「蟲五郎幻行録」その４５４

【宿なし】
で？あの蟲五郎とか言う宿なし野郎はどこへいっちまったんだ？
お前も、あんな得体の知れない野郎と関わるなんて、さぞかし大変だったろう。
いきなり「顔貸してくれ」なんて言われてもなぁ。
ま、とりあえずそこへ座って、ささ、このアゴだし汁でもすするがいいや。
身に入ってんのは青柳貝のむき身だ。
ときどき鴨狩りの猟師なんかにも精つけに振る舞うモンだが、悪かあねえ。
しかし俺も長いこと駕篭かき稼業をやっちゃあいるが、あんな変チクは見たことねえ。
野郎の連れてるあのカニみてえな薄っきび悪りいの、ありゃいってえ何だ？
ありゃきっと顔ダニの親方か何かだろうさ。
さてさて、これ以上続けるとどうにも後味が悪くなっちまいそうだから、この話はこのあたりでよしにしとくか。