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2019年03月19日21:05

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3/15 河鍋暁斎その手に描けぬものなし@サントリー美術館

先日の「奇想の系譜」展に河鍋暁斎が入っていなかったのについては、同名の書出版時に辻先生が入れなかったのは仕方ないにしても、新たにも加えられなくてちょっと残念。師匠の国芳を入れたし、狩野派の山雪が入っているから選に漏れたのかな。それとも奇想というより努力の人だからか。今回の展覧会は、画鬼と呼ばれた暁斎が、独自の境地を生み出した天才であるだけでなく、狩野派で培った技術を日々死ぬまで鍛錬した努力の人、その点をクローズアップした展覧会だ。切り口が面白い。

例えば、晩年は毎日観音様、天神様を1枚描いていたという。その《日課観音図》の展示もあり。2015年(日記)、2017年(日記)に大規模な回顧展があったので、主だった作品は観たからほぼ同じかな、と思ったけれど、観たことある絵も何度見ても感動するし、観たことない絵も面白かった。やはり暁斎はいい。さらっと墨で描いたものでも、緻密に彩色したものでも、諧謔のものでも、信仰心熱きものでも、どの絵も素晴らしい。
前期後期の入れ替えが大幅で、すでに後期展示なので、前期も行けばよかったと後悔。昨今会期中入れ替えありの展覧会が多くて悩ましいところだ。

暁斎だからもっと混んでいると思ったのに、平日だからか、全くストレスなしで見られる状態。今がチャンス!
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https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2019_1/
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河鍋暁斎(かわなべきょうさい・1831〜89)は天保2年(1831)、下総国古河(現・茨城県古河市)に生まれました。数え2歳のときに家族とともに江戸に出て、7歳で浮世絵師・歌川国芳のもとで絵を学び始めます。その後、駿河台狩野派の前村洞和(?〜1841)や、洞和の師・狩野洞白陳信(?〜1851)に入門し、独立後は「狂斎」と号し、戯画などで人気を博しました。そして、明治3年(1870)40歳のとき、書画会で描いた作品が貴顕を嘲弄したなどとして投獄され、以後、号を「暁斎」と改めました。...
江戸幕府の終焉とともに狩野派は衰退していきますが、暁斎は生涯、狩野派絵師としての自負を持ち続けました。暁斎の高い絵画技術と画題に対する深い理解は、日々の修練と古画の学習を画業の基礎とした狩野派の精神に支えられたものでした。...
本展では「狩野派絵師」としての活動と「古画学習」を大きな軸としながら、幕末・明治の動乱期に独自の道を切り開いた暁斎の足跡を展望します。

第1章 暁斎、ここにあり!
第2章 狩野派絵師として
第3章 古画に学ぶ
第4章 戯れを描く、戯れに描く
第5章 聖俗/美醜の境界線
第6章 珠玉の名品
第7章 暁斎をめぐるネットワーク


最初の作品が深大寺の《般若十六善神図》精緻に描かれた正統派の仏教絵画。暁斎は深大寺が災害に遭ったのを悼んで、寄贈尽力したらしい。信仰心篤き人。

《幟鍾馗図》フォト
暁斎の鍾馗図はどれもいいが、これは幟に描かれた疱瘡除けの朱い鍾馗様が本当の鬼を捕まえているみたい、ひっくり返った鯉のぼりも躍動的。

《虎図》フォト
スクエアの画面にいっぱい。両前脚、腹、尾がそれぞれの辺に接する。勢いある虎のうまい描き方。典拠は狩野探幽。

《能・狂言面之地取画巻》フォト
釣狐の着ぐるみ、前ボタンが可愛い

《琵琶猿、瀧白猿》フォト
白猿は白衣観音か。琵琶を捧げもつ猿は手を合わせて祈っているよう。

《菊花白猫図》は画像が見つからず残念だが、蝶を見上げる猫の図は吉祥の定番。それに比して《鳥獣戯画 猫又と狸》は暁斎色が強い。迫真の猫又、今回も見られて満足。本画は何処?
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《美人観蛙戯図》フォト
こちらもまた見られて嬉しい作品。赤子(オタマジャクシではない!)を背負う蛙がいたり、キセルふかしながら相撲観戦する蛙がいたり。それを眺める美人のチラ見えする脛が艶かしく。暁斎は鳥獣戯画をよく研究。

《貧乏神図》フォト
こんな掛け軸をかけていた人がいたのだろうか。クワバラクワバラ。迫真の貧乏神が絵から出てこないように注連縄の結界に入れるなんて洒落ている。表装も端切れの継ぎ合せでボロ振り半端なし。面白い

《群猫釣鯰図》フォト
8匹の鯰が、知らずに悠々泳ぐ鯰に舌なめずり。采配を振るう痩せた猫は置屋の女将、猫は芸者で、鯰はぼんくら役人、社会風刺も。《鯰の船に乗る猫》も同様。こういう時猫は大活躍。これは国芳の影響?
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《地獄極楽図》フォト
大きな絵。落ちる亡者から右回りに視線を動かすと恐ろしい地獄を垣間見て閻魔様の裁きを受けて仏様にすがる一部始終をたどる。暁斎といえば、閻魔と地獄太夫。《閻魔・奪衣婆》では、短冊をつけるのに踏み台になった閻魔大王や、白髪を抜いてもらう奪衣婆は若き美男美女に形無し。この逆転が暁斎ならではの戯画。
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《幽霊図》フォト
行灯の元の幽霊図も怖いが、こちらはたぶん初見。自分の髪を引っ張る仕草で、首を取ろうかと威嚇する幽霊が怖すぎる。

《風俗鳥獣画帖より髑髏と蜥蜴》フォト
髑髏を住処とした蜥蜴のヌメッとした質感に背筋がゾクゾク。西洋風な遠近法で描いた遠景の鳥居が引き立てる。

画帖では《惺々狂斎画帖》が小さいのに大変豪華で、精密に描かれていて素晴らしかった。暁斎のパトロンであった日本橋の小間物問屋勝田五兵衛の為に描いたもの。さくら☆さんの日記にあった《ひな祭り図》は、五兵衛の夭折した娘を慰める為に描いたという。残念ながら前期の展示。個人蔵だが、いつか見てみたい。

3月31日まで



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