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2018年12月15日19:29

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シースルーと十円玉

12月7日の「日々のクオリア」(*)は平岡直子さんの担当の日で、「シャツの胸に十円玉が透けている日差しの中であなたは使う」(相田奈緒)という一首が引かれていた。平岡さんのコメントは当該サイトの記事をごらんください。

(*)https://sunagoya.com/tanka/?p=19593

平岡さんも触れているが、「透けている」を連体形ととることもできないことはないが、この歌の語の勢いからすればここは終止形で切れるととるのが自然だろう。

あなたはその十円玉を何に使ったのか。そもそも十円玉1枚(と読める)で買えるものは何か…? と考えたら、ああ、そうか、かつての(いや、今でも残っているけれど)公衆電話だ、と僕は思ったのだった。その公衆電話からの電話をわれは受けた。という時代の回想(をあえてフィクションで言っているのかも知れない)の歌だろう。

と思えば「透けている」という語も納得がゆく。いつごろからだっただろうか、シースルーの服装をあまり見かけなくなった。特に女性の場合、シースルーは性犯罪を誘発すると言われるようになって…、と聞いたことがある。男性のシャツも同断だろう。シャツの胸ポケットが透けていたあの頃、公衆電話はごく普通に使われていた。

あなたが公衆電話でかけてきた電話から、ちょっとさかのぼってそれに使われた十円玉を想像して詠まれた歌だろう、というのが僕の解釈である。「胸」「透けている」からはほのかなエロティシズムが感じられ、しかし、「日差しの中」なのだからそれはとても健全なものなのだろう、とも思う。良き青春回想詠なのではないだろうか。


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