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2018年05月29日09:33

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下ネタは作品の完成度によってのみ許容できる。ローソン・マーシャル・サーバー監督「なんちゃって家族」(2013)。

日本で公開する前に、アメリカ盤のブルーレイを取り寄せて見ています。そして日本語版はDVDでレンタルしました。私事で行っている英会話の教材としても最適でした。だったら、またぞろ見る必要ないだろって? 僕もそう思っていましたが、最近何度か、スクリーンに映写して見たら映画の印象が違うということに気づいていたので、いつもの勉強会に出かけました。

この映画を知らない映画ファンは多いと思います。2013年のアメリカ興行成績16位のヒット作と言っても、微妙な印象ですしね。でも冒頭からの展開を見てしまえば、もう引き込まれます。大学時代から“ハッパ”の売人として有名だった男が、いまだに売人をやって稼いでいる。だから街で同級生に声をかけられたら、“このハッパはデンバーで最高の品質だ”とプレゼントしてしまう。

そのあたりの展開のテンポのよさがポイントです。一緒に見たFBの友達が感心していたように、短いカットの積み重ねと描写の省略で、計画した物語へと一直線に進んでいく。その手際のよさがみごとです。野暮な映画だと、いろいろ説明したがるんですが一切なし。エマ・ロバーツ扮するパンク少女がホームレスかどうか、テキトーにあしらっている部分なんかすばらしい。

そして、今回スクリーンで見て感心したのが、ミドルショットでの望遠レンズの使用でした。テレビのモニターだと標準レンズにしか感じなかったのに、スクリーンだと望遠レンズ感が強調され、黒澤明の「用心棒」を思わせる画面感覚になってしまうわけです。←これには個人差があります。まず「用心棒」をスクリーンで見ていない人は除外される。

さらに中盤から後半のアクションシーンも、スクリーンだと迫力満点でした。大型キャンピングカーが工場のドアをぶち破って突進し、ポルシェを轢いて真っ二つにするあたり、圧倒的な迫力でした。その後のシーンでキャンピング・カーのフロントが壊れているのですが、その程度かと突っ込む前に、ちゃっんと壊してある、と喜んでしまう。

あと今回僕がもっとも楽しんだのは、挿入曲でした。TLCの“Waterfalls”なんて、そんなに熱心に聴いていた曲じゃないのに、画面とみごとにマッチしています。エアロスミスの“Sweet Emotion”も同じ。別の映画に使われたら、また曲目を検索してしまうでしょう。

それとタイトルにしましたが、下ネタ問題です。僕は下ネタが嫌いです。なぜなら、大半の下ネタで笑ってしまって、笑ってしまっている自分の低俗さにがっかりするから。基本的に下ネタはくすぐり(お笑いの邪道)だと思うから、たいてい評価しません。

これに対してはイギリスの貴族の話を引用しましょう。新聞記者が田舎に住む大貴族に取材に行ったところ、畑に出ているという。で、畑仕事をしている男に居場所を尋ねると、その男が貴族本人だったわけです。貴族いわく“この付近の人間はみんな私が誰か知っているから、ことさら貴族の格好をする必要がない”。後日、ロンドンに来た貴族と記者が会うと、服装は全く以前と同じ。貴族いわく“ロンドンに知人はいないから、どんな格好をしていてもかまわない”。

つまり外見ではなく内面を重要視するということで、同じ下ネタを扱っても内容がしっかりしている映画だと見ていられる。見ていて侘しくなる下ネタは、そのお笑いなどの完成度が低いせいなのです。僕のように、なまじ“上流階級”の暮らしにあこがれを抱いている人間には、この貴族のような人間性を獲得するのは難しい。だから僕は今なお、つまらない下ネタを嫌悪していますが、それは自分を嫌悪しているということです。
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