僕がこの本の気に入ったのはモーツァルトが生きていた時代を平易な文章で語ってくれて、モーツァルトを音楽そのもの以外の違った視点から見ることが出来たからだ。
まずはだれでもご存知のモーツァルトが幼少のころからの家族ともどもの音楽巡業の旅時間の長さ。
成人してからは旅は減っているが総時間として35年の人生のうち10年は旅していたという記述。
ザルツブルクから出なかったらイギリスやフランス、イタリアはじめいろんな国の音楽は聴けなかったわけで、そういう誰もが出来なかった体験を小さいころからしてどん欲に吸収し学んだこそあのような莫大な名曲群が生まれたんだという説には納得。
またモーツァルトが生きていた時代のヨーロッパの各国の世界情勢や音楽状況なんかの詳しい記述もうれしい。
もうこの時代イギリスは産業革命が着々と進んでおりジェームス・ワットが蒸気機関の改良で特許を取ったのが1769年で世界1の経済大国だったといこと。
ここで音楽的成功を収めることは巨額の富を稼げることであり、モーツァルトもイギリスには強いあこがれをもっていたらしい。
また当時の一般市民は演奏する遊びがとても活発で、だから音楽出版なんかも盛況であったといこと。
今のような明確な著作権はまだ確立はしていなかったそうだが。
同時代の作曲家というとハイドンくらいしか浮かばないが、当時はものすごい数の作曲家が存在していたらしい。
モーツァルトなんかよりも人気ある人はいっぱいいたそうな。
そういう人たちの記述にも目を引く。
著者は相当のモーツァルトマニアでありその博識には脱帽。
モーツァルト・ファンにはお勧めです。
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