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2016年12月28日20:37

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不定期不連続物語「蟲五郎幻行録」その220

【駅前】
どこかの駅前。
時間をねじ曲げたように、昔びた風景。
ここが出来たてだったのは、何十年前になろうか。
ちょいと蹴散らせば、消し飛んでしまいそうにはかない。
どこからか、海老混ぜご飯の香りが漂ってくる。
液垂れをして、赤錆をまとった乾電池が転がっている。
カビの繁茂が目地まで及んだ、空色のタイル張りの公衆便所。
スカスカの繊維だけになったヘチマで作られた垢すり。
ここを通る者は、じめついた埃を手土産に家路を辿るのだろう。
不気味に歪んだ蟲五郎の笑みだけが、そこに、その景色に溶け込むようにはりついている。
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