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2016年08月23日08:20

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美濃路36 稲荷芝居と徳川宗春

8月の中旬 薄曇り
見落としていた古渡稲荷神社に向かうため、
闇之森八幡社(くらがりのもりはちまんしゃ)に向かって折れる、
美濃路(国道129号線)の九丁堀交差点から美濃路を北上して
410m以内の古渡町交差点を左折、山王通を西に向かった。

フォト

30mあまり走り、最初の道に左折して南下すると、
40m以内の右手(西側)にある石造八幡鳥居の前に出た(写真左)。
ここにやって来たのは4度目になるが、これまでは西の堀川の方からやって来ていたので、
愛車はもう少し南の車道脇に停めた。
北に向かう社頭前の道は山王通を終点にして、消滅しており、
上空には高架の名古屋高速都心環状線が通っている。
『愛知の江戸時代』(昭和61.9.30発行/国書刊)の図版に見える古渡稲荷神社は
一ノ鳥居と拝殿の関係は現在とほとんど変わっていない(図版中)。
図版中央上部には闇之森八幡社、右上には堀川に架かる古渡橋も描き込まれている。
一ノ鳥居の右側から右奥に延びる塀に沿った道が小栗街道(鎌倉街道)だが、
この道が現在の山王通だ。
鳥居をくぐると直ぐ、参道の右側に
黒御影石に刻まれた由緒書『稲荷神社』の板碑がある。
主祭神の筆頭にはもちろん倉稻魂命が祀られているが、
最初は丹羽郡石枕村(現・江南市大字石枕)に祀られていたのを
稲荷社を崇敬していた尾張藩四代目当主徳川吉通(よしみち)が
亡くなる前年の正徳二年(1712)に、この地を社地と定め、奉遷した。
吉通は元禄二年(14689)に江戸四谷で生まれ、
以来、稲荷社を産土神としていたのだという。

祭神はほかに

・伊弉冊尊  ・徳川義直卿
・瓊々杵尊  ・徳川光友卿
・猿田彦命  ・徳川綱誠卿  
・菊理媛命

白山神社が入っているようだ。
徳川吉通の前代3人の藩主は明治に入ってから、合祀されたというから、
大政奉還と関係があったのだろう。
この神社には吉通の末弟であり七代目藩主となった徳川宗春が関っている。
宗春の時代、将軍吉宗は後に「享保の改革」と呼ばれることになる、
財政改革を推進していた。
徳川御三家No.2であった紀州徳川家がNo.1であった尾張徳川家を押しのけて
将軍(吉宗)を出したことには政治的な事情があったと言われているが、
八代将軍筆頭候補だった吉通、
候補だった松平義昌(宗春の子=陸奥梁川藩初代藩主)、尾張藩五代藩主五郎太(3才)が
相次いで急逝し、吉通が病気で急死する直前には
江戸に随行した尾張藩士2名が吐血頓死・割腹自害するなど、
不可解な出来事が続いたことから、隠謀説もある。
単純化して見ると、二代将軍徳川秀忠の正統な男系子孫が全員、排除され、
養子として秀忠の家系に入った吉宗が将軍に就いたということになる。
紀州徳川家でも吉宗が藩主になる前、兄ふたりが1ヶ月の内に急死している。
この状況で宗春が吉宗を快く思っていなかったのは推察できる。
吉宗が国家的に質素倹約財政を実行している最中、
それに逆らうように宗春は規制緩和開放政策を実行し、自らも歌舞いた。
特に幕府が祭りや芝居などの縮小・廃止を進めていたものの、
宗春は祭りを推奨し、名古屋城下郊外に芝居小屋や遊郭などの遊興施設を認可し、
商人たちに受け入れられ、名古屋城下は活気を帯び、賑わい、繁栄した。
それにも関らず、尾張藩の財政は赤字に転じたとする通説もあるが、
すでに2代目藩主徳川光友の時代に赤字になっていたとみられ、
本当のところは解らない。
ただ、祭一つとってみても、
祭を行なうことが幕府や藩の財政にとってマイナス要素になるとは考えにくい。
宗春と古渡稲荷神社の関係は宗春の郊外での芝居小屋認可によって、
この神社の境内に有数の芝居小屋が立ったことにある。
当時の古渡は、まだまだ、郊外だったのだ。
この小屋での芝居は「稲荷芝居」と呼ばれた。
しかし、吉宗によって宗春が失脚すると、一旦、
名古屋城下の活況は失われてしまった。

(図版中)で神門に当たる場所は現在、二ノ鳥居に変更されている。
二ノ鳥居をくぐると、二つの鳥居より、軸を南に少しズラして
鉄筋造紅白の拝殿がある。

フォト

入母屋造の拝殿の両袖からはこれも紅白の回廊が西に延び、
回廊内に流れ造の本殿が見えるが、回廊の外側に沿って、
旧い裏参道が延びており、旧い常夜灯が並んでいる(写真右)。
宗春の時代には芝居を見終えた観客たちが陽の落ちた中、
この常夜灯の設置されていた灯りの横をそぞろ歩いて堀川の堤防に抜け、
堀川沿いに都心に向かい、その一部は裏参道の北西200mあたりにあった
遊郭に寄ったであろうことは容易に想像できてしまう。

この日は古渡稲荷神社のみに寄って帰途に着いた。
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