「耳たぶを舐めて頂戴」
ポツリと短く、彼女は言った。
短い中にも、しみ出すほどの色気を含んでいた。
しかし、全くその気になることはなかった。
寧ろ、そんな言葉は聞きたくなかった。
そんな尻軽女のような台詞は、彼女には言って欲しくなかった。
取り敢えず、1月になるまでは待って欲しい、とだけ伝えた。
粋がるつもりは毛頭ないが、つい口調が冷たくなってしまった。
彼女は、いかにも心外そうに目を見開くばかりだったが、それも仕方のないことだろう。
そもそも、ニジマスの耳がどこにあるかなんて、僕は全然知らないのだから。
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