２０１２年、いりの舎刊。
目次を見ると、歌群は大きく�機銑垢裡気弔離僉璽箸吠�けられている。その�気�ら�犬泙任�平時の歌。�垢蓮∈鯒�３月１１日以降の歌。高木さんは福島県いわき市にお住まいの方である。
�機銑犬硫侶欧蓮△修譴召譟△気蕕砲い�つかの小見出しによってグルーピングされている。�垢蓮峺�よ」というただひとつの小見出しがあるのみである。歌の編成からして平時とは様相が異なっている。
平時の歌は、詩としての深度を湛える着想が、粘度に富む蜜のような味わいの歌語によってあらわされている作品、という印象が濃い。
例えば、�靴涼罎法嵳邊隋廚箸い�小見出しの３首がある。
柏葉のみどり象る落雁のひとつつまみぬ食うぶべくして
あなはつか力込めたる指さきに崩れをみせぬ葉はたはやすく
鱗粉に見えてきしこと告ぐるべきたれかれなくて落雁の粉
１首目、「食うぶべくして」を結句へ配した倒置によって、言葉が“ゆわ〜ん･･･”とたわむ感じが引き起こされる。だいたい、落雁をつまむのは食べようとしてつまむのだから、「食うぶべくして」などと言うこと自体が過剰なのである。そこに、サラリサラサラとではなく、蜜のようにねっとりとした感触の言葉が生じる。高木さんは、言葉にこうした粘度を与えることに長けておられて、それを実作者としての喜びともされているのではないか、と思った。
２首目も倒置である。しかも１首目を受けて落雁を「葉」と言う。この歌だけを見たら「？」の歌になりそうだが、連作として歌を詠み、読むことの楽しみが、端的に汲み取れる歌だ。
３首目、落雁の粉が鱗粉に見えてきた、という感覚自体が十分にユニークだが、それを告げるべきたれかれがいない、というようなことをわざわざ言うことによって、言葉はさらにたわみ、豊かになる。
そのほか、�機銑犬茲蝪玄�･･･
少女冷ゆ はつかにみづを匂はせて白き靴下はきしそのとき
暗く赤くほぐれぬものを持つことも美しきかな鶏頭の襞
楡の木の繁る街路を幾たびかめぐる筈なるバスに乗り込む
壜曇るごとき朝（あした）のそのなかに容れられてをり吾らは揺れて
Dear? いいえ Deer, あなたのカードの書き出しは森の子鹿のやうにやさしい
息するを忘れたりしか父といふひとの機関のしんとしづもる
そのをとこの頤伝ひひとすぢのかつて雨なりし滴の流る
サンド・バッグの砂は想ふよすぎゆきに女の指をこぼれおつるを
上記３首目（楡の木の･･･）の抱え込む未来、７首目（そのをとこの･･･）・８首目（サンド・バッグの･･･）に抱え込まれた過去など、時間感覚も豊饒である。一方、４首目（壜曇る･･･）などは不思議な空間感覚が立ち上がってくる歌だ。
�垢痢峺�よ」という小見出しの歌群より５首･･･
見よ、それが欠伸をすればをののきて逃げまどふのみちひさき吾ら
給水の口より水はほとばしり春のひかりをうけて耀ふ
鳥がかう羽ばたくやうに両の手をひろげよといふ、吾はひろげぬ
それでも母親かといふ言の葉のあをき繁茂を見つめて吾は
魚（うろくづ）よ、まばたかざりしその眼もて吾らが立ちて歩むまでを 見よ
上記１首目（見よ、それが･･･）が�垢遼粗�の歌。「2011.03.11 東日本大震災」という詞書が付されている。５首目（魚よ･･･）が�垢離薀好箸砲靴討海硫僚諺澗里離薀好箸硫痢�４首目（それでも･･･）は、親子で被曝度を測られる場面の歌や、避難するひとを見送る歌などが並ぶあたりに置かれている。避難して難じられ、避難しなくてもこのように難じられ、どうしてこういう時にひとはひとを難じるのだろう、などというようなことを（歌を歌として享受することからははみ出すけれども）思う。
それでもこの�垢涼罎法⊂綉�２首目（給水の･･･）や３首目（鳥がかう･･･）のような歌が配されていることが、高木さんの勁さなのだろう。あるいはそれは、平時の歌に発揮されていた、言葉に粘度を与える技のたまものとして、作者自身の生にも粘度が与えられたのかも知れないし、おおよそ歌を詠む者、表現をなす者に与えられる力というものなのかも知れない。
�垢硫侶欧砲茲辰董∨佑里茲Δ米票圓癲�直接被災した者のただならぬ日々のありようをいやでも知ることになる。いや、それは、�垢硫侶欧砲茲辰討任△襪里汎瓜�に、�機銑犬硫侶欧鉢垢硫侶欧箸涼覗悗里茲Δ瞥邵垢砲茲辰董△噺世辰進�がいいのかも知れない。
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