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2010年06月13日23:26

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『ぼくと1ルピーの神様』本

・ぼくと1ルピーの神様 作・ヴィカス・スワラップ

映画「スラムドッグ・ミリオネア」の原作らしい。
作者はインド人外交官だ。インドの小説はあまり接する機会がないので、読むことにした。

ムンバイで食堂のウェイターをやっている少年が、TVのクイズ番組で十二問の難題に正解し、大金を獲得した。だが賞金を払いたくないスポンサーが警察をそそのかし、少年は不正行為の疑いで逮捕されてしまう。弁護士との対話の中で、無学な少年が正解できた理由が明かされていく。それは学校で学んだ知識ではなく、波乱に富んだ人生から学び取った教養だったのだ。

十二の問題と対応して、主人公の凄まじい流浪の遍歴が語られる。
この設定には感心した。似た作品を見た覚えがない。オリジナリティは満点と言っていい。しかも生い立ちから順番に語られるわけではなく、クイズの出題順だから時系列がランダムなのだ。それゆえ「この話とこの話の間に何があったんだ?」と気になって仕方がない。あっという間に読んでしまった。

主人公は孤児だったので、周囲の都合で三つの宗教の名をつけられる。
食物をピンハネする孤児院に始まって、さながら地獄めぐりである。
変態性欲者、宗教間の争い、強欲で残忍な警官、残飯あさり、アルコール依存症のオヤジ。不思議と暗いトーンはなく、主人公の賢さとしたたかさが印象に残る。映画大国だけあって、映画にまつわる話題が多いのも楽しい。
起伏に富んでいてめっぽう面白いのだが、ちょっと都合のいい偶然が多すぎる。
何かに味わいが似てるな、と考えて思い当たったのが、ディケンズの『オリバー・ツイスト』だ。あれもご都合主義の権化のような作品だ。
インド人のインテリなら英文学は得意だろうから、影響を受けているのかも。だからといって本作の価値が落ちるわけではない。

結末は賛否両方ありそうだが、私はこれでいいと思う。主人公があるラッキーアイテムにこだわるところが嫌だったが、最後に見事な回答を出してくれた。読者を引き込む力量が抜群。多少の欠点はパワーで吹き飛ばしている。★★★★★




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